支払猶予令(読み)しはらいゆうよれい

山川 日本史小辞典 改訂新版 「支払猶予令」の解説

支払猶予令
しはらいゆうよれい

モラトリアムとも。信用不安の突発に際し,政府預金などの債務支払いを一定期間猶予させる命令。世界的にはアメリカで1933年3月の金融恐慌に際し,F.ローズベルト大統領が4日間の銀行休業を命令した例が有名。日本では23年(大正12)9月1日に発生した関東大震災にともない,山本内閣が震災当日から30日間の支払猶予緊急勅令として発令。つづいて27年(昭和2)3月の金融恐慌の勃発による銀行取付の波及に対し,田中義一内閣が4月22日に3週間の支払猶予令を発動し,全国の銀行も同日から2日間休業した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「支払猶予令」の意味・わかりやすい解説

支払猶予令
しはらいゆうよれい

通常モラトリアムといわれる。戦争天災など非常事態のときに,債務の履行を一時延期することを命じる法令。日本では,(1) 1923年9月関東大震災に際し,同月1日から 30日まで,山本権兵衛内閣が緊急勅令によってとった措置,(2) 27年帝国議会での震災手形善後処理法案の審議発端とする金融恐慌の収拾に際し4月 22日から5月 12日まで,田中義一内閣が緊急勅令および勅令改正によってとった措置がある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「支払猶予令」の解説

支払猶予令
しはらいゆうよれい

法律によって,債務者に一定期間債務支払の停止を認める法令
通称「モラトリアム(moratorium)」。恐慌・戦争などに際し,経済の急激な変動・混乱を避けるため実施。1923年関東大震災の際,第2次山本権兵衛内閣が発布。ついで,'27年金融恐慌の際,田中義一内閣が発布し銀行は全国一斉に休業した。

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改訂新版 世界大百科事典 「支払猶予令」の意味・わかりやすい解説

支払猶予令 (しはらいゆうよれい)

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世界大百科事典(旧版)内の支払猶予令の言及

【関東大震災】より

…救護費は国の支出分が2300万円,義援金が国内3700万円,外国2200万円,その他を含め計8500万円で,義援金に大幅にたよっている。政府は経済活動の混乱を防ぐため9月7日に支払猶予令(モラトリアム)を出し,罹災地一帯の金銭債務で9月中に期限の到来するものは,給料賃金や100円以下の預金支払を除いて30日間支払を延期させ,寛大な条件で銀行に融資して営業を再開させた。同27日には震災手形割引損失補償令を出し,9月1日以前に銀行が割り引いた手形を日本銀行に再割引させ,これで日銀が損失をうけた場合は1億円を限度として政府が補償することとした。…

【モラトリアム】より

…たとえば銀行は債権回収の見込みがたたない一方,預金はその性質上ただちに支払の請求に応じなければならないので銀行取付け,休業に追い込まれやすく,また一般債権の回収を強行すれば企業の連鎖倒産などの懸念が生じる。そこで,そうした混乱,その激化を避けるため,政府は支払猶予令を発して債務の支払をある期間猶予し,時間をかせぎつつ根本的な経済安定策を探るわけである。非常対策であり,正常な取引を阻害し,また経済界の常態復帰を遅らせる懸念があるだけに,実施の例は少ない。…

※「支払猶予令」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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