放送広告(読み)ほうそうこうこく

改訂新版 世界大百科事典 「放送広告」の意味・わかりやすい解説

放送広告 (ほうそうこうこく)

放送広告は印刷広告と並んで広告のきわめて大きな部分を占める(日本では全広告費中約35%。1996年)が,テレビ広告とラジオ広告に大別できる。一般にはCMcommercial message)といわれているが,日本ではテレビCMはCFともいわれる。放送広告は印刷広告に比べて強い訴求力をもち,視聴者(聴取者)の意識,感覚に深く作用して,人々の欲求や生き方に大きな影響を与える。反復訴求が容易であり,放送のネットワーク網により全国的な広告媒体として有効である。放送広告やCMソングからは多くの流行語流行歌ファッションが生まれ,時代を映すとともに,一方で社会現象自体をもつくり出している。

 世界最初のラジオ広告は,1922年アメリカWEAF局の10分間CMであった。日本では25年にラジオ放送が開始されたが,広告は禁じられていた。ただし植民地であった台湾では33年から,同じく満州(中国東北部)では36年に,いずれも短期間試みられている。第2次大戦後の51年のラジオ,53年のテレビによる商業放送民間放送)の発足とともに放送広告が開始され,現在,放送広告の量と広告費では,アメリカに次いで第2位を占めている。ヨーロッパでは公共放送が中心であり,北欧諸国のように広告放送を禁止している国もある一方,イギリスなどのように制限を設けて放送している国もある。欧米以外ではシンガポールのように公共放送でも自由に広告を放送している国もある。

 日本では,公共放送であるNHKを除いた民間放送は,財源を広告収入に依存する商業放送である。各放送会社間の競争や広告主間の広告合戦も熾烈であって,それだけに表現などが〈過剰〉〈過度〉に走りがちであるとして批判も強く,とくに1970年代半ばからは子供向けCMのあり方が問題とされた。日本民間放送連盟では放送基準を定め,傘下の各社も自主規制基準を設けて過度・過剰な表現を規制しているが,広告における表現の自由の問題もあり,その社会的責任は放送広告の課題となっている。
広告
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android