散調(読み)さんじょう

精選版 日本国語大辞典 「散調」の意味・読み・例文・類語

さん‐じょう ‥デウ【散調】

〘名〙 朝鮮器楽曲一種杖鼓(じょうこ)を伴奏とする弦楽器の自由な変奏曲伽倻琴(かやきん)玄琴の散調があるが、伽倻琴散調が流行。即興性もふくまれている。

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改訂新版 世界大百科事典 「散調」の意味・わかりやすい解説

散調 (さんぢょう)

朝鮮の独奏楽器のための楽曲形式で,独特のリズム型(長短(チヤンダン))にもとづく数個の楽章からなり,一般に杖鼓の伴奏がつく。19世紀後半に,全羅南道出身の金昌祚(1865-1920)が散調としての音楽を確立したといわれるが,その楽曲構造や独特の旋律や器楽的な技巧の類似から,全羅道に古くから伝わる巫楽(シナウィ)という即興的に演奏される器楽合奏の影響を受けて発展させた音楽といえる。つづいて,多くの名手が出現し,それら作曲者名をつけた散調の演奏が広く普及し,とくに金竹坡流,沈相健流,成錦鳶流などは有名。つづいて白楽俊(1876-1930)は玄琴散調を始め,その他大笒(たいきん)散調,奚琴散調,觱篥(ひちりき)散調,牙箏散調などが演奏されている。散調の楽曲構造は基本的にはチンヤンジョ(緩),チュンモリ(中庸),チャジンモリ(急)の緩から急にもりあがる三つの楽章からなり,即興的にチュンジュンモリ,クッコリ,フィモリなどの楽章を加えて演奏する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「散調」の意味・わかりやすい解説

散調
さんぢょう / サンジョー

朝鮮半島の代表的な器楽独奏音楽。半島南部の全羅南道(ぜんらなんどう/チョルラナムド)を中心に栄えた器楽合奏の巫楽(シナウイ)と語物のパンソリの影響を受けて発達した。ソロ楽器と杖鼓(じょうこ)によるリズム伴奏との変奏形式の曲で、今日では伽倻琴(かやきん)による伽倻琴散調がもっとも一般的である。これは1890年ころ金昌祚(キムチャンジョ)によってつくられたといわれ、もっとも広い音域と多彩な調をそろえている。ほかに玄琴(げんきん)散調、大笒(たいしん)散調、最近では觱篥(ピリ)散調、牙箏(がそう)散調なども演奏される。それぞれに流派があり、人名をつけて○○流散調とよばれる。

 基本的には、チンヤンジョ(緩)、チュンモリ(中庸)、チャジンモリ(急)の3楽章からなり、さらにチュンモリのあとにチュンジュンモリ、チャジンモリのあとにヒモリ、タンモリなどが加わる。各楽章は楽章名の示す長短(チャンダン)とよぶリズム型を用い、テンポの遅いチンヤンジョから速いタンモリまで、休まずに演奏される。緩、中庸楽章ではビブラートから出る微分音が効果的に奏され、急楽章ではシンコペーションや拍子が途中で変化するヘミオラなどの複雑なリズムが駆使される。

[原谷治美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「散調」の意味・わかりやすい解説

散調
さんぢょう
sanjo

朝鮮の器楽様式。 19世紀末から民間で発生,普及した器楽独奏曲で玄琴,伽 倻琴 (かやきん) ,大琴 (たいきん) の散調があり,いずれも杖鼓の伴奏を伴う。散調は基本的には,緩,中庸,急の3楽章から成るが,間に2,3の楽章を加えて5あるいは6楽章とすることが多い。各楽章の初めに長短 (リズム型) の原型を提示し,それを自由にまたは即興的に変奏させていくもので,変奏が進むにつれてテンポが速くなり,リズムも複雑になる。変奏の仕方や即興性は奏者によって異なるが,だいたい共通した楽曲形式と技法に沿って変奏するのがたてまえである。散調のうち,伽 倻琴散調が特に広く親しまれており,金允徳流,金炳昊流,姜太弘流,沈相健流,朴相根流などの散調が継承されている。

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百科事典マイペディア 「散調」の意味・わかりやすい解説

散調【さんちょう】

サンジョー(散調)

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世界大百科事典(旧版)内の散調の言及

【箏】より

…また,李朝後期以後歌詞を失って器楽化した《霊山会相》や《与民楽》などの器楽曲でも伽倻琴が活躍している。19世紀末より発達した民俗楽の〈散調(さんぢよう)〉はまず伽倻琴用の楽曲から始まった。民俗楽特有の速い楽句を奏する必要性から,伽倻琴はやや小型で胴の幅が狭くなり弦と弦の間も狭められた。…

【朝鮮音楽】より

…18世紀にいたると,時調や詩文学の繁栄に伴い,歌曲の歌辞(詞),時調と呼ばれる芸術的な声楽が確立し,民衆の中では,パンソリと呼ぶ語り物音楽が発達し,多くのパンソリの名歌手が出現した。一方器楽にも〈散調(さんぢよう)〉という独奏楽器のための楽曲形式がおこり,宮廷音楽も含めて,器楽も声楽も民族音楽の大成期を成した。(6)1910年以後の日本統治時代 朝鮮固有の音楽や芸能は尊重されず,受難期であった。…

※「散調」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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