新宮市(読み)シングウシ

デジタル大辞泉 「新宮市」の意味・読み・例文・類語

しんぐう‐し【新宮市】

新宮

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「新宮市」の解説

新宮市
しんぐうし

面積:八〇・〇二平方キロ

県の東南端、三重県との境を流れる熊野川の河口南岸に位置し、かつての新宮町を中心に成立した市。市名は熊野速玉くまのはやたま大社の通称新宮による。北は熊野川を隔てて三重県南牟婁みなみむろ郡、北西から南にかけて白見しらみ山と烏帽子えぼし山の山嶺を境にそれぞれ東牟婁郡熊野川くまのがわ町・那智勝浦なちかつうら町に接し、南東は熊野灘に面する。市域内には目立って高い山はないが、中心街と熊野灘沿岸部を除いては山地で、この山間を高田たかだ川や荒木あらき川・ノ川など中小の河川が流れる。国鉄紀勢本線と国道四二号が熊野灘沿いに通り、熊野川に沿って走る国道一六八号は奈良県五條ごじよう市と当市を結ぶ。

〔原始・古代〕

縄文式土器片が熊野速玉大社の境内と千穂ちほヶ峯北西麓の相筋あいすじにある速玉社御旅所から発見されており、熊野川河口付近の南岸にある阿須賀あすか神社の境内からは弥生時代の竪穴住居跡が発見され、併せて多くの弥生式土器や土師器須恵器などが出土した。千穂ヶ峯の南東神倉かんのくら山の神倉神社境内の霊石「ごとびき岩」の下からは袈裟襷文銅鐸の破片と滑石製模造品が発見された。また佐野さのには弥生時代から古墳時代に至る集落遺跡が確認されている。以上のことから縄文時代には速玉大社付近が熊野川の河口で、その後堆積作用によって阿須賀神社付近に河口が移動したと考えられ、それは、速玉大社南東の大王地だいおうじから貝殻が出土していること、新宮の市街地が土砂の堆積層であること、市内に浮島うきしまの森をはじめとして大きな水溜りであったと思われる湿地が幾つか残っていたことなどから推定できる。また神倉遺跡は神倉山が弥生時代以来の霊地であったことを示すものであるが、神倉山は熊野三所権現降臨の地とされる。

市域は古くは熊野国に含まれ、「日本書紀」神武天皇即位前紀戊午年六月二三日条に神武天皇が「遂に狭野を越えて、熊野の神邑に到り」とある「狭野さの」は佐野、「熊野神邑」は阿須賀神社から南東にかけた地に比定され、上熊野地かみくまのじ・中熊野地・下熊野地の通称が残る。佐野はまた隣接する三輪崎みわさきとともに「万葉集」にも詠まれた。

早くから熊野神が祀られ、「延喜式」神名帳に「熊野早玉神社」と記される熊野速玉大社は景行天皇のときの鎮座といわれ、熊野神に仕えた熊野三党といわれる宇井・榎本・鈴木の三氏は別当を出して熊野地方を統治したというが、明らかではない。「和名抄」記載の牟婁郡五郷のうち、神戸かんべ郷は現東牟婁郡から当市にかけた地に比定され、熊野神の神領地であったと考えられている。

新宮市
しんぐうし

2005年10月1日:新宮市と東牟婁郡熊野川町が合併
【熊野川町】和歌山県:東牟婁郡
【新宮市】和歌山県

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新宮市」の意味・わかりやすい解説

新宮〔市〕
しんぐう

和歌山県南東部,熊野川右岸の市。熊野灘に臨む。北部の北山川右岸に奈良県と三重県に囲まれた飛び地がある。1933年市制。1956年高田村を編入。2005年熊野川町と合体。中心市街地の新宮は熊野三山(国指定史跡)の一つ熊野速玉大社(新宮)の門前町として発達,古くから熊野地方の中心地となった。近世には紀州徳川氏(→和歌山藩)の家老水野氏が丹鶴城を築き,その城下町として発展。熊野観光の基地,熊野川上流域で産する木材の集散地でもあり,貯木場,製材工場があるほか,製紙業も行なわれる。北山川下流の瀞八丁(→瀞峡)は国の特別名勝・天然記念物に指定。浮島の森の新宮藺沢浮島植物群落と熊野速玉大社のナギの大樹は国指定天然記念物。また熊野速玉大社は国宝の檜扇など古神宝類を多数所蔵する。新宮城跡附水野家墓所は国指定史跡。「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産の文化遺産に登録されている熊野参詣道の中辺路,伊勢路,大峯奥駈道(いずれも国指定史跡)が市域を通る。始皇帝の臣である徐福が霊薬を求めて到来したと伝えられ,徐福の墓がある。市域の一部は吉野熊野国立公園白見山和田川峡県立自然公園に属する。JR紀勢本線,国道42号線が海岸部を,熊野川沿いを 168号線が通り,国道169号線と 311号線が北部に通じる。面積 255.23km2(境界未定)。人口 2万7171(2020)。

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