改訂新版 世界大百科事典 「新潮社」の意味・わかりやすい解説
新潮社[株] (しんちょうしゃ)
佐藤義亮(ぎりよう)が1904年に設立した文芸出版社。本社,東京都新宿区矢来町。日本の代表的な文芸雑誌《新潮》(1904)を創刊したほか,書籍出版にも力を入れ,大正期に〈近代名著文庫〉(1913),〈新潮文庫〉(1914)などの翻訳もの,日本の作家のものでは〈代表的名作選集〉(1914)を刊行した。なかでも〈新潮文庫〉は〈岩波文庫〉(1927)より13年前に創刊され,一時中断したが,現在では,岩波文庫とともに代表的な文庫本シリーズに成長した。昭和期に入って円本競争時代には改造社の《現代日本文学全集》に対抗して《世界文学全集》(1927-32)を出版,大量の読書人をひきつけた。雑誌においても《新潮》のほかに《文章俱楽部》(1916-29),《日の出》(1932-45)などを創刊,とくに《日の出》は講談社の《キング》のライバル誌に成長した。第2次大戦後は《小説新潮》(1947),《芸術新潮》(1950)を創刊し,56年には出版社として最初の週刊誌《週刊新潮》を刊行して成功させ,出版社系週刊誌の大量進出への道をひらいた。さらに《フォーカス》(1981),《新潮45⁺》(1982)を創刊し,とくに《フォーカス》は,写真と文章を組み合わせた新しいスタイルの週刊誌として成功を収めた。戦後,廃刊・休刊の雑誌が皆無であることは特筆に値する。書籍出版の分野では文芸書を中心に多くの単行本を出し,〈新潮選書〉〈とんぼの本〉など,多彩な活動をしている。
執筆者:京谷 秀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報