新羅写経(読み)しらぎしゃきょう

改訂新版 世界大百科事典 「新羅写経」の意味・わかりやすい解説

新羅写経 (しらぎしゃきょう)

朝鮮における現存最古の写経で,《大方広仏華厳経》新訳80巻の写経残簡。2軸発見されているが,1軸は凝固していて開くことができない。他の1軸によると,幅29cm,長さ14mの白紙に,巻四十四から巻五十までが墨書筆写され,両端水晶で飾った赤色木軸に巻かれている。巻首数巻が欠落しているので確かなことはわからないが,本来は1軸に10巻ずつ筆写され,合計8軸より成っていたと推測される。また写経2軸とともに金銀泥の経画2片も伝えられており,巻頭の表装画と推定されている。写経末尾には作成年次や関係者名などを記した跋文が付されている。それによると,縁起法師の発願によって754年8月に筆写を始めて翌年2月に完成したこと,写経の主体は全羅道地方の人々であったが,画師や工匠は王京人であったことなどがわかる。朝鮮仏教史や美術史上のみならず,統一新羅の社会構造を知るうえでも貴重。韓国,ホアム美術館の所蔵
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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