新長谷寺(読み)しんはせでら

日本歴史地名大系 「新長谷寺」の解説

新長谷寺
しんはせでら

[現在地名]八千代町八町

鬼怒きぬ川旧河道に北・西・南を囲まれた低い自然堤防突端部にあり、境内には銀杏の巨木が茂る。太光山結城院と号し、真言宗豊山派。本尊十一面観音。享保期(一七一六―三六)飯沼新田いいぬましんでん開発とともに八丁はつちよう(鬼怒川旧河道)も水田化した(飯湖新発記)が、それまでは三方に水をたたえた自然の要害地であった。

延宝八年(一六八〇)八月、二〇世祐範が書いた常州河内郡八町村新長谷寺由来(新長谷寺文書)によると、貞永元年(一二三二)結城朝光が鎌倉から持帰った十一面観音を、八町はつちようの地に堂宇を建立させて安置したという。

新長谷寺
しんちようこくじ

[現在地名]関市長谷寺町

観音かんのん山の南方二〇〇メートルの地にある。吉田山と号し、真言宗智山派。本尊は大和長谷はせ(現奈良県桜井市)の余木をもって作られたと伝える十一面観音。吉田きつた寺とも記し、関の吉田観音として親しまれる。近世には美濃三十三所観音の第三三番札所であった。現武儀むぎ洞戸ほらど村にある高賀こうか神社蔵の大般若波羅蜜多経の正中二年(一三二五)六月三日の奥書に「美州武義郡新長谷寺」とみえる。開基は空海の四世法孫である護忍。貞応元年(一二二二)護忍は大和長谷寺に参籠中に霊夢を得て、五年の歳月をかけ、嘉禄二年(一二二六)吉田村に七堂伽藍と山内一六坊舎を鎮護国家の道場として完成させたという。

新長谷寺
しんちようこくじ

[現在地名]伊予三島市寒川

西寒川の豊岡にしさんがわのとよおか山の中腹の観道かんどうにあり、東に宇摩うま平野が一望できる。通称は「はせ寺」といい、また「寒川の観音さま」として広く信仰される。高野山真言宗で豊岡山と号す。本尊は初瀬試観世音菩薩像(十一面観音)

西条誌」には「新長谷寺豊岡山普門院古義真言宗 高野山金剛峯寺末 本尊 観世音 本堂四間五間 十王堂一間一間半 釣鐘堂一丈四方 毘沙門堂一間半四方」とあり、天平二年(七三〇)の開基と伝えられる。

沿革については、大和国の長谷はせ寺で丈六の本尊をつくるためこころみの六尺の像をつくったが、本尊完成後にこの試の像を海に流した。これが江の元えのもと海岸の黒岩(影向石ともいう)漂着、漁夫がこれを祀っていたが、行基来遊の時、以前流した仏像であることを知り、聖武天皇に奏上し、新長谷寺を造立したと伝えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新長谷寺」の意味・わかりやすい解説

新長谷寺
しんちょうこくじ

岐阜県関市長谷寺(はせでら)町にある真言(しんごん)宗智山(ちさん)派の寺。吉田山(きったさん)と号する。本尊は十一面観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)。通称吉田観音(かんのん)。1222年(貞応1)空海第4世法孫の護忍(ごにん)が後堀河(ごほりかわ)天皇の勅願を受けて開創。縁起によると、観音像は大和(やまと)(奈良県)長谷(はせ)寺で修行していた護忍が夢のお告げにより帰庵(きあん)し、端麗な尊像を得たもので、のち新長谷寺の寺号を賜ったと伝える。国家鎮護の道場として栄えたが、1300年(正安2)焼失して再建、その後室町中期にも火災にあったが補修されて諸堂完備した。本堂、三重塔(国重要文化財)などは美濃(みの)の法隆寺ともたたえられている。寺宝の木造十一面観音像、厨子(ずし)入阿弥陀如来(あみだにょらい)像(鎌倉時代。厨子扉の裏には一面に仏画を研出蒔絵(とぎだしまきえ)で表す)は国重要文化財。

[祖父江章子]

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百科事典マイペディア 「新長谷寺」の意味・わかりやすい解説

新長谷寺【しんちょうこくじ】

新長谷寺(しんはせでら)とも。岐阜県関市にある真言宗智山派の寺。本尊十一面観音。山号は吉田(きった)山,通称を吉田観音。1222年醍醐寺の護忍が大和の長谷寺を模して創建,後堀河天皇によって勅願寺となった。しばしば火災にあったが,現存の伽藍(がらん)は1460年の建造で,真言寺院の旧制をよく伝えており,その多くは阿弥陀如来立像などとともに重要文化財。

新長谷寺【しんちょうこくじ】

長谷寺(はせでら)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新長谷寺」の意味・わかりやすい解説

新長谷寺
しんはせでら

鎌倉市長谷にある浄土宗の寺。通称は長谷観音奈良県桜井市の長谷寺の徳道上人が開基した。本尊は『十一面観世音菩薩』。北条,足利,徳川各氏の帰依を受け,保護された。

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デジタル大辞泉プラス 「新長谷寺」の解説

新長谷寺

岐阜県関市にある寺院。本尊の木造十一面観世音菩薩のほか、本堂、三重塔、釈迦堂など多くの国指定重要文化財がある。「吉田(きった)観音」とも。

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世界大百科事典(旧版)内の新長谷寺の言及

【関[市]】より

…近年,自動車部品製造工場も進出している。新長谷寺(しんちようこくじ)(吉田(きつた)観音)には重要文化財の堂宇や仏像があり,古代に当地を支配した身毛君一族の氏寺といわれる弥勒寺跡(史),刀工が崇敬した春日神社もある。春日神社所蔵の能装束類は重要文化財。…

※「新長谷寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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