方方・旁（読み）かたがた

精選版 日本国語大辞典

かた‐がた【方方・旁】

[1] 〘名〙

① 「人々」を敬っていう。

※枕（１０Ｃ終）一〇一「御かたがた・君たち・うへ人など、御前に人のいと多くさぶらへば」

② 貴人の部屋、屋敷の複数形。

※竹取（９Ｃ末‐１０Ｃ初）「よしなく御かたがたにもわたり給はず」

③ いろいろの場所や事柄を表わす。あちらこちら。ほうぼう。あれやこれや。

※和泉式部日記（１１Ｃ前）「人々かたがたにすむ所なりければ、そなたに来たりける人の車を、車侍り、人の来たりけるにこそとおぼしめす」

[2] 〘代名〙 対称。多人数の相手をさすていねいな言い方。本来は複数をさすが、単数をさす場合にも用いられた。おのおのがた。あなたがた。

※太平記（１４Ｃ後）五「旁(カタガタ)は定めて聞き及ばせ給ひたる事も候覧」

[3] 〘副〙

① あれこれと。なにやかやと。さまざまに。

※宇津保（970‐999頃）沖つ白浪「いまはわたくしの御ことをし給はんと、かたがた劣らずしつらはれて」

② あちらこちら。また、至る所に。

※古今（905‐914）離別・四〇五「したの帯の道はかたがたわかるともゆきめぐりてもあはんとぞ思ふ〈紀友則〉」

③ いずれにしても。どのみち。

※平家（１３Ｃ前）二「保元に申行ひし事、いくほどもなく身の上にむかはりにきと思へば、おそろしうこそ候ひしか。是はさせる朝敵にもあらず。かたがた恐れ有るべし」

[4] 〘接続〙 ついでに。兼ねて。かつ。

※火の柱（1904）〈木下尚江〉一四「其上、十二月廿五日と云ふ日に特別の関係ある婦人の新客がありますので、旁々(カタガタ)御光来を願ひました」

[5] 〘接尾〙

① (動作性の意を持った名詞に付いて) 「…のついで」「…がてら」「…を兼ねて」の意を表わす。

※和英語林集成（初版）（1867）「サンケイ katagata(カタガタ) カマクラヘ ユク」

② (物事を表わす名詞に付いて) そのことがあれやこれやとあって、の意を表わす。

※開化の入口（1873‐74）〈横河秋濤〉上「畜生の様な形態(ざま)をして実に外分旁(カタカタ)世間へ顔も出されぬわい」

出典　精選版 日本国語大辞典