日本振袖始(読み)にほんふりそではじめ

改訂新版 世界大百科事典 「日本振袖始」の意味・わかりやすい解説

日本振袖始 (にほんふりそではじめ)

人形浄瑠璃。時代物。5段。近松門左衛門作。1718年(享保3)2月,大坂竹本座初演。神代に取材したもので,《日本王代記》などの系統に属す。素戔嗚(すさのお)尊の神話伝説を中心に,巨旦(こたん)蘇民の兄弟の争いを扱っている。素戔嗚尊は奪われた十握(とつか)の宝剣を探し求めて,美濃国の悪鬼や三熊野の大人(うし)を退治し,出雲の簸(ひ)の川まで出かける。途中で,吉備国の巨旦将来蘇民将来の兄弟争いの裁きをつけ,八岐大蛇人身御供になる奇稲田姫(くしなだひめ)の危難を救い,ついに十握の宝剣を取り戻す。八つの甕(かめ)に毒酒を入れ,大蛇を退治する大蛇退治が五段目にある。これがからくり見せ場だったらしい。〈振袖始〉という外題は,素戔嗚尊が姫の熱病を癒すために,両袖の脇明けを切りさいて熱気をはらしたことによっている。同年,すぐに歌舞伎でも上演された。1809年(文化6)6月江戸市村座で上演されたときには,7世市川団十郎が素戔嗚尊に扮し,市川流の白目でにらみ,病人が治癒したという逸話が残されている。興行としては不評であった。浄瑠璃としては,悪鬼や大蛇のからくり,滑稽な節事など,変化に富んだ構成である。歌舞伎としては,あまり上演されることはないが,ただ〈大蛇退治〉の場面だけが,明治以降も何度か舞踊に作られている。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「日本振袖始」の解説

日本振袖始
にっぽん ふりそでのはじめ, にほん ふりそではじめ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
近松門左衛門(1代)
初演
享保3.1(京・榊山座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

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