早雲寺殿廿一箇条(読み)そううんじどのにじゅういっかじょう

改訂新版 世界大百科事典 「早雲寺殿廿一箇条」の意味・わかりやすい解説

早雲寺殿廿一箇条 (そううんじどのにじゅういっかじょう)

早雲寺殿は伊勢宗瑞北条早雲)の法名に加贈された尊称であって,宗瑞が制定したとされる家訓。《北条早雲廿一ケ条》ともいう。その内容は,仏神信仰,早起,早寝,周囲の用心神仏を拝む心持,奢侈の戒め,身だしなみ,出仕のときの心得上意を受けるときの心得,雑談虚笑の戒め,諸事を人に任す,読書習字,宿老に祗候のときの礼儀,虚言の戒め,歌道の勉学,乗馬の習得朋友の選択,四壁垣根等の修理,夕方六つ時の閉門火の用心,文武弓馬の兼備等について述べており,日常生活態度,武士の奉公上の心得が中心となっている。最近の研究では,宗瑞の作であるかどうか,本文中からその徴表を検出することはできない,といわれるに至っている。《群書類従》《日本経済大典》《中世法制史料集》などに収録。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「早雲寺殿廿一箇条」の意味・わかりやすい解説

早雲寺殿廿一箇条
そううんじどのにじゅういっかじょう

中世後期の家訓の一種。伊勢新九郎長氏(いせしんくろうながうじ)(北条早雲(ほうじょうそううん))の作と伝えられるが確証はない。しかし、成立の時期は少なくとも江戸初期までさかのぼることができる。その特徴は、一般に家訓が家長によって一族・子孫を対象として作成された訓戒であるのに対し、むしろ家臣への教訓・統制という内容をもち、分国法的な性格をあわせもつ点にある。内容は第1条の神仏への崇敬から始まり、早寝早起きや火の用心、文武両道の鍛錬の必要性など家臣の日常生活や奉公上の心得を平明、簡潔に記しており、きわめて庶民的で実際的なものである。実力によって成長した戦国大名にふさわしい家訓ということができよう。

[大久保俊昭]

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百科事典マイペディア 「早雲寺殿廿一箇条」の意味・わかりやすい解説

早雲寺殿廿一箇条【そううんじどのにじゅういっかじょう】

伊勢宗瑞(いせそうずい)(北条早雲)が制定したとされる家訓。仏神の信仰,早起き,早寝,奢侈の戒め,読書習字,乗馬の習得など日常生活態度,奉公上の武士の心得などを記す。

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世界大百科事典(旧版)内の早雲寺殿廿一箇条の言及

【家訓】より

…父祖や家長が子孫,一族,あるいは家臣に対して作成した訓戒。
【日本】
 中世前期には有名な《北条重時家訓》《北条実時家訓》などがあり,後期には戦国期の《朝倉孝景条々》と伊勢長氏の《早雲寺殿廿一箇条》,それに子息3人に3本の矢でさとした逸話で有名な《毛利元就書状》が知られている。北条重時,実時,毛利元就のものは,父が子に与えた訓戒として,狭義の家訓にもっとも適合的な内容のものであり,他方,《早雲寺殿廿一箇条》は家・一族共同体の支配に擬制された大名領国下の家臣団を対象とした広義の家訓の一例といえよう。…

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