明の鐘(読み)あけのかね

精選版 日本国語大辞典 「明の鐘」の意味・読み・例文・類語

あけ【明】 の 鐘(かね)

[1] 明け六つ(午前六時頃)に寺でつく鐘の音。
長唄・明の鐘(18C中頃か)「心が変らば徒(あだ)にや二世の誓も空事よ、枕取る手に明(アケ)の鐘」
[2] (明の鐘) 長唄。めりやす物。作詞者、作曲者、作曲年代ともに不明。「宵は待ち」ともいう。男との別れを惜しみ、夜明けの鐘を恨む女の心をうたったもの。単純な曲なので、初心者用の手ほどきに用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「明の鐘」の意味・わかりやすい解説

明の鐘 (あけのかね)

長唄。作詞・作曲者,作曲年代は不明。別称《宵は待ち》。三下りめりやす物で,稽古の手ほどきによく用いられる。女が男を待つ気持ちや,明けの別れをうたったもので,それらしい情のこもった曲だが,子供の入門曲としては歌詞内容がふさわしくないので,穂積陳重(ほずみのぶしげ)作詞の《梅さくら》(梅桜さては霞か)という替え歌詞を用いる場合もある。《女里弥寿豊年蔵(めりやすほうねんぐら)》(1757)の同名曲とは別曲
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「明の鐘」の意味・わかりやすい解説

明の鐘
あけのかね

長唄(ながうた)の曲名。作曲年代、作詞者、作曲者とも不詳。「宵は待ち」と歌い出すので、これが通称になっている。歌詞は、相思相愛の男女の逢瀬(おうせ)と、夜明けの鶏(とり)の声や鐘(かね)の音に別れを惜しむようすを歌っている。三味線調弦は三下りで、旋律拍子技巧が簡単なので、初心者の手ほどきに用いられる。ただし子供の稽古(けいこ)のためには別の歌詞がある。独吟の「めりやす」としても使われ、篠笛(しのぶえ)を入れることが多い。

[茂手木潔子]

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