明法博士(読み)みょうぼうはかせ

精選版 日本国語大辞典 「明法博士」の意味・読み・例文・類語

みょうぼう‐はかせ ミャウバフ‥【明法博士】

〘名〙
① 大宝元年(七〇一大宝律令周知徹底のため、国家が諸地方に派遣した臨時の官。
続日本紀‐大宝元年(701)八月戊申「遣明法博士於六道〈除西海道〉講新令
大学寮の明法課程の教官。また、大宰府に博士と並んで置かれた教官。
※九条公爵家旧蔵延喜式裏文書‐宝亀四年(773)三月九日・大政官符案「田三町 右明法博士従七位下山田造県麻呂料」

めいほう‐はかせ メイハフ‥【明法博士】

〘名〙 =みょうぼうはかせ(明法博士)〔運歩色葉(1548)〕

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デジタル大辞泉 「明法博士」の意味・読み・例文・類語

みょうぼう‐はかせ〔ミヤウバフ‐〕【明法博士】

明法道の教官。平安中期以降は、坂上中原両家の世襲となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「明法博士」の意味・わかりやすい解説

明法博士
みょうぼうのはかせ

奈良時代におかれた律令格式を教授する官職名。唐の国子監に設置された律学博士に相応する。奈良・平安時代における明法博士には,最も優秀な人物が選抜され,帰化系氏族に属する人々が多かった。これは彼らが幼時から漢籍に親しみ,律令を理解しやすかったからと思われる。奈良・平安時代を通じて,明法博士の職掌は次第に拡張され,朝廷において随時開かれる律令講書会の講師をつとめ,また朝廷,権門の諮問に応じて,『明法勘文』という擬律の書を提出することなども含まれるにいたった。さらにこの職と兼ねて検非違使の次・判官,刑部省大判事,勘解由使などの勢官に任じられる者が相次ぎ,その権威はきわめて高いものとなった。明法博士にして刑部省大判事を兼ねる者がこの職の極官と考えられた。平安末以降,学問世襲化の現象に伴い博士の職も,中原,坂上両家の世職となり,この職は「明法道之極官」とされたが,依然としてその職をうることはむずかしく,非器,すなわち無能な者はたとえ嫡系であっても除目の席上で排除されることがあった。近世にあっては,上記両家の支流,町口・勢多・平田などの諸家が,これに任じられたが,その学識ははなはだしく低下し,講義にたえないほどになった。しかし,なお本官を帯びる者をもって,法学の最高権威者とする考えは明治初年まで続き,江戸時代においても明法勘文の提出は形式的には行われていた。最後の明法博士は,明治の後半,『古事類苑』の編纂に関係した勢多章甫。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「明法博士」の解説

明法博士
みょうぼうはかせ

大学寮で明法道を教授する教官。大宝律令の制定直後に一般官人や大学寮の学生(がくしょう)に律・令を教授する明法博士があったが,728年(神亀5)大学寮での正規の教官として律学博士が設置された。定員は2人で相当位階は正七位下。律学博士は唐の官名そのままだったが,同時におかれた明法生,および彼らの任官試験の名称の明法試から,明法博士の呼称が一般化したものであろう。799年(延暦18)には大宰府にもおかれ,825年(天長2)に相当位階が従七位下と定められた。

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世界大百科事典(旧版)内の明法博士の言及

【博士】より

…その後,博士は文章(もんじよう)博士,紀伝博士(のち停止し,文章博士を加置),明経(みようぎよう)博士に分かれ,さらに律学博士(のち明法(みようぼう)博士)がおかれた。平安中期以降,明経博士は清原,中原家,文章博士は菅原,大江,日野家,明法博士は坂上,中原家,算博士は三善,小槻家が主として任ぜられ,家業となった。なお,近代の学位の博士(はくし)については〈学位〉の項目を参照されたい。…

【律令法】より

古代法【石母田 正】
[研究史]
 律令条文の解釈・研究は,701年(大宝1)に大宝律令が施行された直後からはじめられている。すなわち,その年から翌年にかけて,藤原不比等(ふひと)をはじめとする編纂者たちは,明法博士(みようぼうはかせ)または令官(りようかん)として,分担して律令条文を講説し,また解釈を治定した。その後は専門学者が令師(りようし)として解釈の治定にあたったが,728年(神亀5)に大学のなかに律令学者の養成機関としての明法科が設けられると,律令の研究もさかんとなり,738年(天平10)ころには大宝令の私的注釈書〈古記〉が生まれた。…

※「明法博士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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