春の日(読み)ハルノヒ

デジタル大辞泉 「春の日」の意味・読み・例文・類語

はるのひ【春の日】

江戸前期の俳諧集。1冊。山本荷兮やまもとかけい編。貞享3年(1686)刊。蕉門連句発句を集めたもの。俳諧七部集の一。

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精選版 日本国語大辞典 「春の日」の意味・読み・例文・類語

はる【春】 の 日(ひ)

春の時節一日。しゅんじつ。《季・春》
万葉(8C後)九・一七四〇「春日(はるのひ)の 霞めるときに 住の江の 岸に出で居て」

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改訂新版 世界大百科事典 「春の日」の意味・わかりやすい解説

春の日 (はるのひ)

俳諧撰集。荷兮かけい)編。1686年(貞享3)8月下旬刊。1冊。題簽(だいせん)には〈波留濃日〉とある。〈春めくや人さまざまの伊勢まいり〉(荷兮),〈なら坂や畑(はた)うつ山の八重ざくら〉(旦藁),〈蛙(かわず)のみききてゆゆしき寝覚かな〉(野水)をそれぞれ発句とする歌仙3巻と,〈山吹のあぶなき岨(そま)のくづれ哉〉(越人)を発句とする表六句,さらに諸家の発句58句を収める。発句数の多い作者は越人(9句),荷兮(8句),重五・杜国(各5句)らであり,芭蕉の句は〈古池や蛙飛び込む水の音〉をはじめ,3句収められている。1684年(貞享1)冬に成立し,翌年春に刊行され,蕉風俳諧出発の書とされる《冬の日》(荷兮編)の後編または姉妹編と考えられている。《冬の日》にみられた技巧的,誇張的な傾向が薄らぎ,比較的平易でおだやかなものとなっている。後年の《ひさご》《猿蓑》へとつながっていく。《俳諧七部集》第2の書。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「春の日」の意味・わかりやすい解説

春の日
はるのひ

俳諧撰集(はいかいせんしゅう)。一冊。荷兮(かけい)編。題簽(だいせん)「波留濃日 全」。1686年(貞享3)刊。「俳諧七部集」の第二集。尾張(おわり)俳人荷兮、野水(やすい)、越人(えつじん)、旦藁(たんこう)らによって興行された歌仙三巻、追加表合(おもてあわせ)1、および同地方諸家の四季発句(ほっく)58句を収録する。本書は『冬の日』の続編たる性格をもち、所収の連句はいずれも春季の興行だが、連句には芭蕉(ばしょう)は一座せず、発句の部に「古池や蛙(かはづ)飛こむ水のをと」など三句が入集(にっしゅう)するにすぎない。連句、発句ともに、『冬の日』よりはるかに平易で穏健なものになっており、それだけに詩的緊張感は少ない。

[雲英末雄]

『中村俊定校注『芭蕉七部集』(岩波文庫)』『幸田露伴著『評釈春の日』(1946・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「春の日」の意味・わかりやすい解説

春の日
はるのひ

江戸時代中期の俳諧撰集。山本荷兮 (かけい) 編。1巻。貞享3 (1686) 年刊。『俳諧七部集』の一集で,『冬の日』に次ぐもの。尾張国の俳人が中心で,松尾芭蕉が一座した連句がなく,発句も2句しかとられていないが,『阿羅野』の芭蕉序文により,『冬の日』の続編として芭蕉指導のもとに成ったとみることができる。俳風は平板であるが,穏やかで,蕉風志向を暗示する。

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世界大百科事典(旧版)内の春の日の言及

【七草】より

…七種とも書き,春の七草と秋の七草がある。
[春の七草]
 〈せり,なずな,ごぎょう,はこべら,ほとけのざ,すずな,すずしろ,これや七草〉とうたわれたように,これらを春の七草と称し,この,ごぎょうはハハコグサ,はこべらはハコベ,ほとけのざはタビラコ,すずなはカブ,すずしろは大根とされる。…

※「春の日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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