春告鳥(読み)はるつげどり

精選版 日本国語大辞典 「春告鳥」の意味・読み・例文・類語

はるつげ‐どり【春告鳥】

[1] 〘名〙 鳥「うぐいす(鶯)」の異名。《季・春》
※梵燈庵主袖下集(1384か)「鶯は〈略〉春つけ鳥」
[2] 人情本。五編一五巻一五冊。為永春水作・歌川国直画。角書「風月花情」。初編は天保七年(一八三六)刊。二~四編は同八年刊。日本橋徳町(石町)の富商福富屋の若隠居鳥雅と深川芸者小浜、吉原玉屋の花魁(おいらん)薄雲、小間使お民との色模様を主題に、鳥雅とお民が結ばれるまでを描いたもの。続編として「春色籬の梅」(天保九~一〇年刊)が書かれた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「春告鳥」の意味・読み・例文・類語

はるつげどり【春告鳥】[書名]

人情本。為永春水作、歌川国直画。天保7~8年(1836~1837)刊。商家次男若旦那、鳥雅と、女たちとの恋愛模様を描く。5編15巻のうち前半の2編第5巻までが春水の単独作。

はるつげ‐どり【春告鳥】

ウグイス別名
[補説]書名別項。→春告鳥

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「春告鳥」の意味・わかりやすい解説

春告鳥
はるつげどり

人情本。為永春水(ためながしゅんすい)作、歌川国直(くになお)画。五編15巻15冊。1836、37年(天保7、8)刊。「風月/花情」と角書(つのがき)。日本橋徳町(石町)の富商福富屋の次男で向島(むこうじま)の別荘に若隠居している鳥雅(ちょうが)と深川の芸者小浜、吉原玉楼の花魁(おいらん)薄雲、腰元のお民(たみ)との恋愛関係を描いた作品で、続編『春色籬(まがき)の梅』(1838)に至っていちおう完結する。二編巻之五までは春水単独作で、以下は門人の春蝶(しゅんちょう)、柳水(りゅうすい)、春暁、春江らの執筆している場面が多い。そのために構想も散漫で、文章も拙劣であるが、春水執筆の巻之五までは、筆力もさえ、春水独特の凄艶(せいえん)な場面描写の妙が遺憾なく発揮されている。多くの実在人物を登場させて「時代(ときよ)の風俗」を描こうとし、そのために女性の衣装描写もきわめて精細で、典型的な風俗小説である。

[神保五彌]

『前田愛校注・訳『春告鳥』(『日本古典文学全集47』所収・1971・小学館)』『神保五彌「風月花情/春告鳥」(『国文学解釈と鑑賞』所収・1965.5・至文堂)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

動植物名よみかた辞典 普及版 「春告鳥」の解説

春告鳥 (ハルツゲドリ)

動物ヒタキ科の鳥。ウグイスの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の春告鳥の言及

【ウグイス(鶯)】より

…これらそれぞれのグループ内の近縁種は,互いに姿,羽色が非常によく似ているが,さえずりは種ごとにはっきりと違っている。【樋口 広芳】
[民俗]
 春に早く現れて微妙な声で鳴くので,春告鳥,花見鳥,歌詠鳥,経読鳥などの異称がある。この鳥を重要な要素とする昔話に,鳴声で父が子の死を知る〈継子と鳥〉,禁止を守らず幸福を失う〈見るなの座敷〉,愚か嫁がウグイスの声をまねて失敗する〈鶯言葉〉などがある。…

※「春告鳥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android