改訂新版 世界大百科事典 「晒首」の意味・わかりやすい解説
晒首 (さらしくび)
元来は呪術的儀式であったが,死者の首がもついろいろな意味での魔力に対する信仰の薄れた近世以降になると,それは支配者の意志,民衆に対する命令,警告,教化などのメッセージを表現・伝達するメディアの一つとして使われる。〈もの〉によるコミュニケーションである。1660年,ピューリタン革命のあと王政復古したイギリスのチャールズ2世が,父チャールズ1世処刑の責任者として,すでに死んでいるクロムウェル,アイアトンらの墓をあばき,首を矛(ほこ)に刺して晒したことは,すでに死んでいる者の首に意味をこめておりその典型である。
日本の近世には,晒首は中国にならって梟首(きようしゆ)と呼ばれ,また梟首した首を獄舎の門に懸けたので獄門とも呼ばれた。首を晒すのも獄門に懸けるのも,〈引回し〉と同様に死罪の付加刑であった(《公事方御定書》)。いわば,民衆へのみせしめ,実物教訓である。みせしめの影響は直接の目撃者を超えて容易に広がったが,為政者の意図に反して反発を助長した事例も多い。
→梟首 →刑罰 →獄門
執筆者:香内 三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報