(読み)ぼかし

精選版 日本国語大辞典 「暈」の意味・読み・例文・類語

ぼかし【暈】

〘名〙 (動詞「ぼかす(暈)」の連用形名詞化)
① ぼかすこと。また、そのようにしたもの。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)二「いろ白にてくちびるあつく、目のふちは紅のぼかし」
絵画、染め物の技法一つ境目色彩濃淡を次第に濃くまたは薄くして陰影を表わすもの。また、その技法による部分
※文芸類纂(1878)〈榊原芳野編〉八「暈(くまとり) ボカシと称す」

ぼか・す【暈】

〘他サ五(四)〙
① 色や形などの境目をはっきりさせないようにする。また、薄暗くぼんやりとさせる。
※詞葉新雅(1792)「ボカシタヤウニミエル にほふ」
意味内容がはっきりしないようにいう。意識的にあいまいな表現をする。
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉五「バッタと云ふ言葉丈ことさら力を入れて、〈略〉其あとをわざとぼかして」

うん【暈】

〘名〙 発光体のまわりに見える光の輪の総称。気象学上は、光冠と区別し、その場合は高層の雲を形成する氷晶によって、太陽や月の光が屈折・反射されたときできるもので、ふつう光源を中心として半径約二二度の環状の帯としてあらわれる。〔色葉字類抄(1177‐81)〕

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デジタル大辞泉 「暈」の意味・読み・例文・類語

うん【暈】[漢字項目]

[音]ウン(呉)(漢) [訓]かさ ぼかす
日や月の周りにできる薄い光の輪。かさ。「月暈日暈
めまい。「眩暈げんうん
ぼかし。「暈繝うんげん
[難読]眩暈めまい

かさ【×暈】

《「」と同語源》太陽や月の周囲にできる淡い光の輪。光が高層大気中に浮かぶ氷の微細な結晶を通過するときに屈折して起こる。日暈ひがさ月暈つきがさの類。光環こうかんハロー。うん。
[類語]グローリーブロッケン現象御来迎

うん【×暈】

太陽や月などの周囲に見える、輪状の光。かさ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「暈」の意味・わかりやすい解説


かさ

太陽や月の周りに現れる半径22度の光の輪。太陽の周りにできる光の輪はやや色がついていて、内側(太陽の側)が薄い赤褐色となる。月の周りに出る光の輪は白色である。巻層雲の中に浮かぶ氷晶に太陽(または月)の光が入射し、屈折、反射してできる。普通は半径22度の大きさである。これを内暈(うちかさ)とよぶ。このほか半径46度の光の輪もときどき現れる。これは外暈(そとかさ)である。内暈と外暈の色の配列は同じで、外側が青、内側が赤である。光の輪のほか、次に述べるような光の弧、玉、柱などが氷晶の屈折や反射ででき、これらをまとめて暈(かさ)現象とよぶ。太陽を通る水平線上で、内暈の上にのるか、またはすこし外側に白色の光の玉が現れることがある。これは幻日(げんじつ)である。幻日を通って斜めに内暈に達する弧が現れることがあるが、これをローウィッツ弧という。内暈や外暈の最高点(または最低点)に接して現れる光の弧を上端接弧(または下端接弧)という。天頂付近に現れる光の弧を天頂弧という。天頂弧の色の配列は外が赤、内がすみれ色で、太陽の高度が32度以下と低いときのみに現れ、美しい虹(にじ)のように見えることがある。太陽を通って鉛直に光の柱が立つことがある。これは太陽柱といい、日没か日の出時に現れやすい。なお、極寒の地では、氷霧(こおりぎり)のときに暈現象が現れることがある。

 暈現象が現れると天気が悪くなるという天気俚諺(りげん)がある。暈現象は巻層雲に出ること、巻層雲は低気圧の前面にできやすいことを考え合わせると、この俚諺は当たることもある。ただし低気圧がどこを通るかによって外れることもある。

[大田正次]


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改訂新版 世界大百科事典 「暈」の意味・わかりやすい解説

暈 (かさ)
halo

太陽または月の光線が,氷晶でできた薄い雲を通る時に屈折,反射され,太陽や月のまわりにできる光の輪や筋やかたまりである。光の屈折によるものは,屈折率が波長によってちがうために色がついて見えるが,反射によるものは波長によるちがいがないから,明るく(白く)見えるだけである。いずれにしても,光のたくさん来る方向が,色がついたり,あるいは明るくなって見える。暈の見える雲は層状の上層雲である絹層雲がふつうであるが,寒地の冬では地面近くにも氷晶がたくさんあることがあるから,低い所でも暈の現象が見える。

 太陽でできるのを〈日の暈〉,月でできるのを〈月の暈〉と呼んでいる。暈の現象はいろいろな現れ方をするが,出現する頻度の最も多いのは〈内暈〉で,次に〈幻日(げんじつ)mock suns〉〈上端接弧〉〈天頂弧circumzenithal arc〉〈太陽柱(光柱)sun pillar〉〈外暈〉〈幻日環parhelic circle〉の順である。東京の長年の観測結果では,1年間に日の暈の見えた回数は平均約57回になっているから,そんなに珍しい現象ではない。太陽や月の光線の氷晶の結晶面への入り方,結晶面での反射のしかた,結晶面からの出方によって,まだまだほかの形式の暈もあるのだが,それが出現する機会は割合少ない。
執筆者:


暈 (くま)

〈隈〉とも書かれる。東洋絵画の彩色技法の一つで,隈取,暈渲(うんせん)ともいう。色彩や墨を濃淡にぬりわけたり,ぼかしたりすることによって,対象の凹凸感や立体感をあらわす。またそれ自体の装飾的効果のために用いられた。人物の顔や肉身の周縁部に,朱などの濃色のぼかしを施し,立体感を強調したり,着衣の衣褶線にそって濃淡をつけ,表面の凹凸感をあらわす。また逆に周縁部を同系の明色や白色,あるいは金泥でぼかした返り暈(照り暈とも呼ばれる)もある。隈取の技法はインドや西域で行われた陰影法の影響により中国で盛行したといわれている。キジル石窟や敦煌石窟の北魏窟の諸尊には,形式的で強烈な隈取がみられるが,敦煌の初唐窟では,比較的自然なものがあらわれ,法隆寺金堂壁画にも隈取法がとり入れられている。さらに平安時代の伝真言院曼荼羅(東寺)の諸像では各種の暈を積極的に用いて鮮麗な色彩効果をみせる。なお水墨画などに多く用いられる外隈は,例えば白鷺などを強調するためにその輪郭の外に薄墨などの隈を施すものをいう。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「暈」の意味・わかりやすい解説

暈【かさ】

うん,ハローhaloとも。巻層雲など氷晶からなる雲をとおして太陽や月を見たとき,その周囲に現れる光の輪。氷晶の表面とその内面で光が屈折,反射するため,(にじ)と同様に分光される。視半径は内暈約22°,外暈約46°。色の配列は外側が紫,内側が赤。外暈の発現頻度(ひんど)は少ないが,内暈より鮮明である。氷晶の結晶形,結晶の方向,太陽高度の違いによって,いろいろの暈の変種が現れる。→幻日
→関連項目イブン・アルハイサム巻層雲

暈【うん】

(かさ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「暈」の意味・わかりやすい解説


かさ
halo

氷晶からなる雲を通して太陽や月を見たとき,太陽または月のまわりに起こる光学的現象。ハロー。太陽や月からの光が,氷の結晶によって反射,屈折を受けて生じる。いろいろな種類があるが,最も一般的なものは半径約 22°の円をなして光るもので,その内側は赤,外側は紫色を帯びる。これを内暈という。ほかにも外暈,太陽柱,水平環,天頂環等がみられる。これらは氷晶の形,浮かんでいるときの姿勢,太陽や月の高度,氷晶に入射する光の角度の違いによって現れる。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【石碑】より

…頭部を半円形(円首)もしくは三角形(玉器の圭に似るので圭首という)につくり,前者を碣(けつ),後者を碑とよびわけることもある(碑碣(ひけつ))。円首では縁の円弧にそって凹線を刻み,これを暈(うん)という。暈には2~3本の虹形凹線を一方にかたよせて刻(ほ)る場合と,左右対象に刻る場合があり,ここを竜の浮彫で飾ることもある。…

【銀河系】より

…このように,銀河系の中央部を占める扁球状のバルジと,それを取り巻く円盤部は,構成成分を異にし,凸レンズ状の銀河系主体はそれらの合成であるということができる。なお,種族IIの天体の一部は,この銀河系主体の周辺の,やや扁平な球状の範囲にも希薄ながら分布しており,この部分をハローhaloと称している。以上が銀河系の構成であるが,最近は,銀河系の範囲が,上記のハローの部分のずっと外側にまで広がっているという説が有力となり,目には見えないこの広がりの部分を,コロナcoronaと呼ぶ例も目につくようになった。…

※「暈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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