暖か・温か(読み)あたたか

精選版 日本国語大辞典 「暖か・温か」の意味・読み・例文・類語

あたた‐か【暖か・温か】

〘形動〙
外気や物の温度が低くないさま。熱があるさま。
(イ) 寒くなくて気持のよいさま。また、冷たくなくて気持のよいさま。気候や温度が程よいさま。《季・春》
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「そのあたたかなるほどは、かく、しありきて、母に食はす」
※至宝抄(1585)「一、水ぬるむ 一、あたたか」
(ロ) あついさま。熱気暑気のあるさま。
蜻蛉(974頃)下「あたたかにもあらず、寒くもあらぬ風、梅にたぐひて鶯をさそふ」
(ハ) 衣類などが、それを身につけたとき、体をあたためて心地よさそうであるさま。
※小学教授書(1873)〈文部省〉「人々は、冬になると、暖かな、着物を、着て、夏は、薄き、着物を、着ますか」
② 財産が豊かであるさま。経済的にゆとりがあるさま。
談義本・艷道通鑑(1715)三「挊(かせ)ぐに貧乏の足遅くそろそろ手前も暖(アタタカ)になれば」
物事がおだやかにすらすらとゆくさま。
浄瑠璃・心中天の網島(1720)上「仏はおろか地獄へもあたたかに、二人連れでは落られぬ」
④ いい気なさま。人を馬鹿にしたさま。ずうずうしく、こしゃくなさま。
※浄瑠璃・大覚大僧正御伝記(1691頃)二「美しいかほをして人の男に心をかけ、ようもようもあたたかに此舟へは乗られたなふ」
⑤ 相手への態度がきびしくないさま。また、愛情がこまやかなさま。思いやりがあるさま。
※三体詩素隠抄(1622)二「此寺は、教寺にて談義があまりにあたたかすぎたと云わぬばかりぞ」
⑥ 色あいがやわらかく、冷たい感じがしないさま。
※第2ブラリひょうたん(1950)〈高田保画伯「私は画伯の画の温かな色調に感動させられた」
[語誌](1)古くは、現代の「あたたか」よりは温度が高く、むしろ「あつい」に近い意も表わした。平安朝仮名文では、「あたたか」の例自体が少ない。
(2)「ひややか」が「冷ゆ」「冷やす」などの語幹とかかわるヒヤに接尾語ヤカを付して生まれたのから類推して「あつし(熱・暑)」の語幹とかかわるアタをもとに派生した語形か。

あった‐か【暖か・温か】

〘形動〙 「あたたか(暖)」の変化した語。
※洒落本・寸南破良意(1775)年季者今夜はあったかでござすねへ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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