しば‐し【暫し】
〘副〙 (「しまし(暫━)」の変化した語)
(イ) 限られた
短時間内の意を表わす。ちょっとのま。
少しの間。わずかの時間。
暫時。当分。
※
書紀(720)景行二七年一二月(寛文版訓)「且
(シハシ)待ちたまへ。吾有所言
(ものまうさむ)」
※土左(935頃)承平五年一月一三日「いささかに
雨降る。しばしありてやみぬ」
(ロ) (相手の行動を制止させるのに用いる) しばらく待て。
※
太平記(14C後)八「
陶山、暫
(シバシ)と制しけり」
[語誌](1)
上代には「しまし」「しまらく」があり、その「しまし」が中古以降転じて「しばし」となった。ほぼ同時に「しまらく」から転じた「しばらく」も併用されるが、
和歌や
女流文学などの
和文にはもっぱら「しばし」が用いられ、漢文訓読体では「しばらく」が用いられた。
(2)中世以降になると「しばし」は雅語としては残るが、
口語としては衰えて、「しばらく」が専用されるようになる。なお、中古以降、
類義語「とばかり」ももっぱら和文で用いられた。
しま‐し【暫し】
〘副〙 (「しばし」の
古形) 限定された
少時間内の意を表わす。わずかの間。少時。当分。しばし。
※
万葉(8C後)一五・三七八五「ほととぎす間
(あひだ)之麻思
(シマシ)置け汝が鳴けば吾が思ふ心いたも
術無し」
※
御伽草子・高野物語(室町末)「『父
(てて)よしまし、今行くは』とて〈略〉
山路をさして行くところに」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「暫し」の意味・読み・例文・類語
しまし【▽暫し】
[副]《上代語》「しばし」の古形。
「奈呉の海に舟―貸せ沖に出でて波立ち来やと見て帰り来む」〈万・四〇三二〉
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