曾我の対面(読み)そがのたいめん

改訂新版 世界大百科事典 「曾我の対面」の意味・わかりやすい解説

曾我の対面 (そがのたいめん)

曾我兄弟が敵(かたき)工藤祐経対面する場面の総称。初めて演じられたのは1676年(延宝4)1月江戸中村座といわれるが,享保(1716-36)以後の江戸歌舞伎で〈曾我狂言〉が初春興行慣例になってからは,その一番目大詰にかならず設けられ,毎年の各座でさまざまな変形が生まれた。明治になって河竹黙阿弥が様式を統一させた台本が近年に伝わり,《寿曾我対面(ことぶきそがのたいめん)》または《吉例曾我礎(きちれいそがのいしずえ)》などの外題一幕物として単独に上演されている。通称を《曾我の対面》または単に《対面》ともいう。曾我兄弟は小林朝比奈の手引きで祐経に対面。はやる五郎を兄十郎と朝比奈がなだめ,兄弟は工藤と再会を約して別れる。江戸期には曾我狂言のフィナーレのごとく,出演者一同が顔をそろえ初春を寿ぐという儀式的な性格が喜ばれてきたものだが,現代では歌舞伎の役柄の典型が集まり,扮装,動き,せりふ,音楽の各面で様式美を発揮する一幕として,季節をかまわず上演をくり返している。
曾我物
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曾我の対面」の意味・わかりやすい解説

曾我の対面
そがのたいめん

曾我物語題材とした曾我狂言 (→曾我物 ) のなかで,曾我十郎・五郎兄弟が父親のかたき工藤祐経とその館で初めて出会う場面,またそれを変形させた場面のことをいう。江戸の歌舞伎では享保頃から初春 (正月) に曾我狂言を上演することが年中行事化し,対面の場はその1番目大詰に演じられることが原則となっていた。工藤は座頭,十郎は和事,五郎は荒事の役として上演されるのが一般的な型になっており,衣装,音楽などにも一定の決りがある。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「曾我の対面」の解説

曾我の対面
(通称)
そがのたいめん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
御贔負新玉曾我 など
初演
文化6.1(江戸・森田座)

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