最先端研究開発支援プログラム(読み)サイセンタンケンキュウカイハツシエンプログラム

デジタル大辞泉 の解説

さいせんたんけんきゅうかいはつしえん‐プログラム〔サイセンタンケンキウカイハツシヱン‐〕【最先端研究開発支援プログラム】

総合科学技術会議(現総合科学技術・イノベーション会議)の主導で発足した研究開発支援制度。日本学術振興会に総額1000億円の基金を創設、世界一を目指す先端的研究を助成するもの。公募により、iPS細胞再生医療、新超伝導材料、次世代質量分析システム開発など30件の課題と中心研究者が選ばれた。FIRSTプログラム(Funding Program for World-Leading Innovative R&D on Science and Technology)。→世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

最先端研究開発支援プログラム
さいせんたんけんきゅうかいはつしえんぷろぐらむ

世界最先端をゆく日本の研究者30人の研究を総額1000億円の予算で支援した科学技術振興策。「先端的研究を促進して我が国の国際的競争力を強化するとともに、研究開発成果を国民及び社会へ還元する」目的で、リーマン・ショック後の景気対策の一環として2009年度(平成21)から2013年度まで集中的に行われた。英語名Funding Program for World-Leading Innovative R&D on Science and Technologyの頭文字の一部をとり、略称FIRSTとする。総合科学技術会議の主導により、iPS細胞の山中伸弥(しんや)、質量分析システムの田中耕一、サイボーグ型人支援ロボットの山海嘉之(さんかいよしゆき)(1958― )、最高速データベースエンジンの喜連川優(きつれがわまさる)(1955― )、小型衛星の中須賀真一(なかすかしんいち)(1961― )、脳の解明の岡野栄之(ひでゆき)(1959― )ら30人の研究プロジェクトが選出された。1000億円の基金の管理・運用は日本学術振興会が担当し、(1)1テーマに年間10億~30億円という巨額研究費を投ずる、(2)単年度の使い切りが原則の研究費を3~5年間、年度を越えて自由に使うことができる、(3)研究者が研究支援組織を指名できる、などの特徴がある。なお、予算額は当初2700億円であったが、2009年の民主党への政権交代で事業が見直され、1000億円に削られた。

 支援プロジェクトの一つである白土博樹(しらとひろき)(1957― )と日立製作所共同開発した「陽子線がん治療装置」は、痛みが少なく副作用を抑えた治療を実現してアメリカの病院から受注するなどの成果をあげている。一方で、総合科学技術会議による中間評価(2013年2月)では、特許数、論文数、目標到達度などから4研究プロジェクトに改善が求められた。

 この後継策として、政府は2014年度から、研究開発責任者(プログラム・マネージャー)に大きな権限を与えて早期実用化を目ざす「革新的研究開発推進プログラム」(ImPACT)をスタートさせた。予算規模は550億円で、2018年度まで実施される予定である。2015年末までに、FIRSTにも選ばれた山海をはじめとする16人がプログラム・マネージャーに選出された。

[編集部]

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