最密充塡(読み)さいみつじゅうてん(英語表記)closest packing of spheres

改訂新版 世界大百科事典 「最密充塡」の意味・わかりやすい解説

最密充塡 (さいみつじゅうてん)
closest packing of spheres

同じ大きさの球を,立体的に最も密に詰めた構造を球の最密充てん構造という。球を同一平面上にできる限り密に詰めるには,隣りあう3球が正三角形の3隅にくるように並べ,どの球の周りにも6個の球が接するようにする。これは,平面上で同じ大きさの円を最も密に詰める並べ方に相当し,円の占める割合はπ/2\(\sqrt{3}\),すなわち91%になる。球の三次元的な最密な詰め方は,球の最密な層の正三角形の重心の真上に,第2層の球がくるように平行に積み重ねたものである。第1層Aに対して,第2層の球の位置は,正三角形のとり方でBまたはCと2通り存在する(図)。すなわち,隣接する上下の層は,A,B,Cの異なるものとなる。したがって,球の最密充てんの並べ方は,積層順を示すA,B,Cの積み重ね方で表現できる。ABの繰返しで表されるものは,ACのそれと同じ型式になり,六方晶系の格子がつくられるので,この様式を六方最密充てん構造hexagonal closest packing of spheres(hcpと略す)という。またABC(またはACB)の繰返しの積み重ね方は,層に垂直な方向を対角線とする面心立方格子の構造となるので,この様式を,立方最密充てん構造cubic closest packing of spheres(ccpと略す)という。以上の2型式は,ともにすべての球が,空間群(結晶)の1種の同価点で表せる。両者の構造では,球の空間を占める割合(占有率)はπ/3\(\sqrt{2}\),すなわち74%である。また各球は,同じ層内の球6個と,上下の層の球3個ずつと,計12個の球に接する。

 金属や希ガスのように原子半径がほぼ同じものからなる結晶では,上記2型式のいずれかの結晶構造をとるものが多い。金,銀,銅,アルミニウムアルゴンなどはccpであり,亜鉛,マグネシウムなどはhcpである。他の繰返し構造(例えばABCB)も,上記2型式の場合と同様に74%の占有率を持ち,どの球も12個の球に接する。しかし,すべての球は空間群の1種の同価点では表せず,2種以上の同価点の集合になる。なお,最密構造では,4球と6球で囲まれる四面体と八面体間隙が存在する。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android