月(天体)(読み)つき

百科事典マイペディア 「月(天体)」の意味・わかりやすい解説

月(天体)【つき】

太陰とも。地球の衛星。半径1738km(地球の約1/4),体積は地球の約1/50,質量は地球の0.0123倍,比重3.35,表面重力は地球の0.17倍。地球からの平均距離は38万4400km(地球赤道半径の約60倍),視半径15′33″で太陽とほぼ等しい。地球のまわりを恒星に対し周期約27.3日(恒星月)で公転しており,太陽光を反射して輝き,周期約29.5日(朔(さく)望月)で満ち欠けする。最大光度−12.5等(太陽の明るさの約50万分の1)。公転周期と同じ周期で自転するため,つねに地球へ同じ半面を向けているが,自転軸が公転軸に対して6°41′傾き,公転軌道面(白道面)も地球公転面(黄道面)に対し5°9′傾いているうえ,太陽引力の作用で月の公転運動が複雑に変動するため,地球からは月の全面の59%が見える。 月面には暗い平たんな〈海〉と呼ばれる部分と,明るく起伏に富む〈陸〉と呼ばれる部分があり,おもに後者に大小さまざまのクレーター,断層や亀裂などの構造線,クレーターから四方にのびる光条がみられる。月面には大気も水もなく,昼夜それぞれ約15日間続くため,昼間温度100℃以上,夜間温度−100℃以下になり,生物存在の可能性はない。表面は玄武岩に似た岩石からなる。月の年齢は地球(約45億年)と同程度かそれ以上と測定されている。月の成因については,地球から分離したとする潮汐(ちょうせき)進化説は否定され,太陽系生成の際地球とともにできたとする説が有力だが,他に遠方でできた小型惑星が地球の近くを通過するとき捕獲されたとする説がある。 1950年代から米国,ソ連によって始められた月探査によって,数多くの新データが得られた。(1)大気 月面に存在するガスの全濃度は,1cm3当りの分子数でいうと2×105程度で,太陽系空間の太陽風の圧力以上の大気が月にないことを示している。(2)月の重力異常マスコン) 月を周回した探査機の軌道から,月面には重力がまわりに比べて強い場所があることがわかり,マスコンと名づけられた。表側ではマスコンと〈海〉の地域は一致するが,裏側では必ずしも一致しない。(3)月の形 慣性楕円体の最長軸を地球に向けているが,重力等ポテンシャル面の形は最短軸を地球に向けている。地球から測定した月の平均半径は1738kmであるが,実際はこれより小さく,1736kmに近い。(4)月の岩石 〈海〉の岩石は玄武岩質で36億〜39億年前に形成され,山地の岩石は斜長岩的な岩石で約46億年前に形成された。月から持ち帰った岩石で最も若いものは約31億年前のもので,この時期以降月の火山活動はほとんど停止したと推測される。(5)月の内部構造 月の地震の解析から,第1帯(深さ60kmまで,斜長岩質),第2帯(深さ300kmまで,カンラン石に近い超塩基性岩),第3帯(深さ800kmまで,ポアソン比の高い岩石),第4帯(中心近くまで,部分溶融している部分),第5帯(中心から半径170〜360kmの部分,鉄と硫黄からなり溶融している)に分かれる。表面の10mあたりまではレゴリスと呼ばれる細かい砂や泥,その下の厚さ100〜300mはレゴリスの少し固まったもの。(6)月の磁場 地球磁場の1000分の1くらいの磁場を記録したが,局所的なもので,一般磁場は未発見。 古代の神話では月は女神とされ,西洋のシンボリズムの体系の中では一般に,太陽の能動性を受け入れてはらむ多産な受動性を表す。錬金術でも女性原理を表し,水銀,揮発性物質,冷,湿を象徴。

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