有珠山(読み)うすざん

精選版 日本国語大辞典 「有珠山」の意味・読み・例文・類語

うす‐ざん【有珠山】

北海道南西部、洞爺湖の南にある活火山。二重式の火山で山頂の火口に大有珠、小有珠の溶岩円頂丘がある。明治新山昭和新山などの寄生火山をもつ。昭和五二年(一九七七)の火山活動により、有珠新山が出現した。平成一二年(二〇〇〇)にも大噴火を起こした。

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デジタル大辞泉 「有珠山」の意味・読み・例文・類語

うす‐ざん【有珠山】

北海道南西部、内浦湾に面する二重式活火山。最高峰の大有珠は標高733メートル。洞爺とうやカルデラ外輪山上にできたもので、明治新山・昭和新山などの寄生火山があり、昭和52年(1977)の大噴火で有珠新山ができた。平成12年(2000)にも噴火。有珠岳

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日本歴史地名大系 「有珠山」の解説

有珠山
うすざん

伊達市と虻田あぶた郡虻田町・壮瞥そうべつ町の境にそびえる活火山。洞爺とうや湖の南岸に位置し、洞爺火山カルデラ南壁に寄生した火山で、標高七三三メートル。「戊午日誌」(作発呂留宇知之誌)は「ウス岳」について「烟を噴て天にさし出る計」と記し、板本「東蝦夷日誌」に載る地図では「臼沼」(洞爺湖・有珠湾)と同様に「臼岳」と漢字表記されている。明治二年(一八六九)八月の国郡画定によって成立した有珠郡の名が山名にも採用され、「北海道志」巻六には「有珠嶽」について「有珠郡ニ在リ高三千四百二十尺」とある。山体の形成は洞爺湖をたたえた洞爺火山カルデラ形成後で、カルデラ南壁に完新世の約八〇〇〇―六〇〇〇年前にかけて寄生火山として、まず本体が形成された(「札幌の自然を歩く」第二版、「北海道5万年史」)輝石安山岩質溶岩と火山砕屑岩の互層からなるコニーデ(円錐)型火山で、頂上部は直径約一・二―一・六キロの低い外輪山をもつ平頂丘をなし、その内部に溶岩円頂丘の大有珠おおうす(七三三メートル)小有珠こうす・有珠新山、潜在溶岩円頂丘のオガリ山をもつ二重式火山になる。

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改訂新版 世界大百科事典 「有珠山」の意味・わかりやすい解説

有珠山 (うすざん)

北海道南西部,洞爺湖の南に位置する活火山。有珠岳ともいう。山体は東西・南北とも約8km,伊達(だて)市,洞爺湖町,壮瞥町にまたがる。二重式火山で山頂部に直径1.8km,標高約500mの外輪山をもち,火口原に小有珠,大有珠(733m)の溶岩円頂丘およびオガリ山,有珠新山(669m)の潜在円頂丘のほか銀沼と呼ばれる小沼がある。また,北麓にはコンピラ山,西丸山,明治新山,東丸山などの潜在円頂丘があり,東麓には昭和新山の溶岩円頂丘がある。有珠山は完新世のはじめ,玄武岩・輝石安山岩の溶岩・火山砕屑物を噴出して成層火山を形成したのち,山頂部が爆発で崩壊して外輪山を生じ,多量の崩壊物が岩屑なだれとなって南麓を覆い,一部は内浦湾(噴火湾)に達した。その後数千年活動を休止していたが,1663年(寛文3)に山頂から流紋岩質軽石が大量に噴出し,続いて激しい水蒸気爆発がおこった。軽石は東方に降下して30kmはなれた登別温泉,白老(しらおい)付近で厚さ1mも積もり,火山灰は山麓で3m堆積した。1769年(明和6),1822年(文政5)および53年(嘉永6)の噴火では火砕流の発生を伴い,1822年にはこのため南西麓の1村が全焼し,死者50人を出し,馬1437頭を失った。小有珠は1663年または1769年に生じたものと考えられ,1822年にはオガリ山を生じ,53年には大有珠が生成した。1910年(明治43)に北麓で水蒸気爆発がおこり,地盤が隆起して明治新山(四十三(よそみ)山)が生まれ,1943-45年の活動では東麓に昭和新山が生成し,特別天然記念物に指定されている。77-78年には火口原で軽石噴火のあと水蒸気爆発が多発し,82年春まで地震,地殻変動が続き,火口原の中心が180m隆起して有珠新山が形成された。この活動では軽石・火山灰の降下,地殻変動および降雨に誘発された泥流(土石流)で,多大の災害が発生した。歴史時代の7回の活動は,いずれもケイ酸に富む流紋岩~デイサイト質のマグマ(SiO2,73~68%)によって発生している。この種のマグマは粘性が高く,噴火に先行して局地的な地震を頻発し,地殻変動を伴うのが特徴で,軽石噴火,火砕流,水蒸気爆発などのいずれかが発生し,明治新山,有珠新山のように地盤が隆起して潜在円頂丘を形成したあと,場合によっては小有珠,大有珠,昭和新山のように溶岩円頂丘を出現させた。円頂丘溶岩は粘性が著しく高いため基盤の地層をかぶりながら上昇しており,その表面は天然煉瓦や円レキ層に薄く被覆されている。

 1910年の活動後,明治新山北西の洞爺湖畔で温泉の自然湧出が発見され,やがて今日の洞爺湖温泉(食塩泉,55~60℃)に発展した。北東麓の壮瞥温泉(芒硝泉,67~91℃)は50年代にボーリングによって開発された。1949年に支笏洞爺国立公園の一部に指定され,77年の噴火前は火口原の自然林に牛馬が放牧され,登山道や遊歩道,昭和新山南麓からのロープウェーも整備されていた。北麓には北海道大学有珠火山観測所(1977開設)がある。2000年3月にも噴火し,最高時約1万5000人が避難した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有珠山」の意味・わかりやすい解説

有珠山
うすざん

北海道南西部、内浦湾(噴火湾)に面し、東日本火山帯に属する活火山。有珠岳ともいう。約11万年前に大規模な火砕流噴火によって、カルデラ(現在の洞爺湖(とうやこ))が形成され、約2万年前から断続的に火山活動がおきカルデラの南側に有珠火山が生じた。有珠山は玄武岩、安山岩の成層火山で、山頂部に小カルデラ(直径約1.5キロメートル)をもつ。最高峰(737メートル)の大有珠(1853年誕生)と小有珠(1769年誕生)の両潜在円頂丘(潜在ドーム)はデイサイトであり、寄生火山である昭和新山(398メートル)は1943~1945年に誕生したデイサイトの潜在ドームの一部が地表に顔を出したものである。さらに大有珠、小有珠の中間の有珠新山(1977~1978年誕生)、北側山腹の明治新山(1910年誕生。別名四十三山(よそみやま))など、多くの潜在ドームがある。1663年(寛文3)や1822年(文政5)の噴火では火砕流などで犠牲者を出す噴火がおこっている。

 2000年(平成12)3月末から4月にかけて有珠山の西山西麓(せいろく)と洞爺湖温泉街のすぐ裏でマグマ水蒸気爆発が発生し、西山西麓火口群と金毘羅山(こんぴらさん)火口群が出現した。噴火活動は同年8月ごろまで続いた。西山西麓火口群の直下にマグマが貫入し、新山が形成された。噴火は前兆地震や地殻変動によって的確に予測され、住民避難がうまく行われた。過去400年の有珠山の噴火のなかでは比較的規模の小さいものであった。噴火に関連し、強い火山性地震が続発し、顕著な地殻変動がみられるのが特徴。札幌管区気象台火山監視・情報センターが常時火山観測中である。北海道大学の有珠火山観測所がある。支笏(しこつ)洞爺国立公園に属し、温泉、勝景に恵まれている。洞爺湖・有珠山地域は、2009年に「洞爺湖有珠山ジオパーク」として世界ジオパークに認定された。

[諏訪 彰・中田節也]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有珠山」の意味・わかりやすい解説

有珠山
うすざん

北海道南西部,洞爺湖の南岸にある二重式火山(→複式火山)。活火山で,常時観測火山伊達市壮瞥町洞爺湖町の境に位置する。標高 733m。輝石安山岩の火山砕屑物からなる。火山体頂部のカルデラ(直径約 3km)内に,大有珠(733m),小有珠(557m),オガリ山,有珠新山の 4中央火口丘がある。寛文3(1663)年から今日までに数回の噴火が記録され,1910年の噴火では,洞爺湖畔の山麓部に 45ヵ所のすり鉢形火口のほか,臼状の砕屑丘(ホマーテ)が形成された。1944年には東麓に寄生火山昭和新山(398m)が出現。その後,沈静期を経たのち,1977年8月7日突然爆発を起こし,約 1億m3火山灰を噴出,洞爺湖周辺の農地,林地,洞爺湖温泉壮瞥温泉の両集落に多大な損害を与え,降灰区域は北海道の約半分に及んだ。気象庁はこの噴火を「1977年有珠山噴火」と命名。さらに 2000年3月31日からの噴火では,有珠山の西に位置する西山と金比羅山の西側に 65個の火口が形成され,2000年5月以降終息に向かうまで洞爺湖温泉を中心に虻田町(今日の洞爺湖町),壮瞥町,伊達市が損害を被った。1949年支笏洞爺国立公園区域に指定。

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百科事典マイペディア 「有珠山」の意味・わかりやすい解説

有珠山【うすざん】

北海道南西部,洞爺(とうや)湖カルデラ南部に噴出した二重式火山。有珠岳とも。直径約2kmの外輪山に囲まれた火口の東縁に大有珠(最高点で標高733m),西縁に小有珠(557m)があり,ともに粘性の大きい石英安山岩からなる。大有珠は江戸時代に形成されたとみられる。東麓には昭和新山がある。1977年―1978年水蒸気爆発が多発,1982年春まで地殻変動も続いて火口原に有珠新山(670m)が生じた。さらに,2000年3月に噴火を開始,最大時1万5000人が避難したが,避難指示は7月に火口付近を除き解除された。現在も引き続き,気象庁の常時観測する活火山となっている。支笏(しこつ)洞爺国立公園に含まれる。
→関連項目壮瞥[町]

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知恵蔵 「有珠山」の解説

有珠山

北海道の洞爺湖に隣接する活火山。2000年3月末から数カ月にわたって、活発な噴火活動があった。噴火は3月31日に北西山麓の西山で、翌日にはそこから北東に1km離れた金毘羅山で始まり、いずれも高さ3000m以上の噴煙を上げた。噴出物は、新しいマグマの破砕物と、古い岩石の破片が半々だった。2つの領域は、その数日後から多数の小火口を造って熱水や水蒸気を出し、間欠的に泥混じりの噴煙のジェットを上げた。火口周辺の地面には、60mに達する隆起が生じた。噴火の4日前から、有感地震を含む多数の火山性地震が北西山麓の地下で発生し、それに基づいて火山噴火予知連絡会は噴火の可能性を事前に警告し、周辺の住民1万人余りが避難した。その後、活動低下の見通しに従って、避難地域は段階的に縮小された。これ以前では、1663年に始まる7回の噴火がある。うち5回は初期に山頂でマグマ爆発を起こした。特に1822年の噴火では火砕流が全方位に出て、内浦湾に隣接する当時の虻田(あぶた)集落が全滅した。2回の山麓噴火は、水蒸気爆発の後に、1910年には明治新山を、43〜45年には昭和新山を生み出した。

(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)

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事典 日本の地域遺産 「有珠山」の解説

有珠山

(北海道有珠郡壮瞥町)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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世界大百科事典(旧版)内の有珠山の言及

【火山帯】より

…東日本火山帯の一部をなす。これに属する諸火山は,おもに輝石安山岩,デイサイトからなり,有珠(うす)山や岩手山にはアルカリ(ナトリウム,カリウム)に乏しい玄武岩を産する。成層火山が多く,ときには溶岩円頂丘を伴い,また北海道の支笏,洞爺,濁川,北奥羽の八甲田,十和田などのように,大規模な火砕流噴出に伴った山体の陥没で生じたカルデラが多い。…

※「有珠山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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