朝鮮相撲(読み)ちょうせんずもう(英語表記)Silum

改訂新版 世界大百科事典 「朝鮮相撲」の意味・わかりやすい解説

朝鮮相撲 (ちょうせんずもう)

朝鮮に古くから伝わるシルムssirǔmのこと。競技者は腰から右ひざに日本の相撲のまわしに当たる布を巻き,互いに利き腕をかけて組み合ったまま競技を開始,左足で前身を支えながら倒し合う。日本の相撲のような土俵がないのが特徴で,両足の強靱さを競い合う点では蒙古相撲モンゴル相撲)に似ている。高句麗の古都輯安(集安)にある角抵塚(かくていづか)古墳(鴨緑江対岸。現在の中国側)の壁画にシルムの原形が描かれており,中国の《後漢書》にも記述されているところから,起源2~7世紀の間とみられる。旧暦の5月5日に端午節供を祝う行事として催されている。韓国では国民体育大会で実施されるなどして盛んになり,現在はプロ組織もできてシルム人気が高まっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「朝鮮相撲」の意味・わかりやすい解説

朝鮮相撲
ちょうせんずもう
Silum

シルム。朝鮮の伝統的格技で,4世紀の百済・新羅以前から行なわれていたといわれる。李朝 (1392~1910) では端午の節句の行事として庶民の間で盛んに行なわれたが,西欧スポーツの導入普及につれて衰退した。競技法は時代とともに変化している。現在は,上半身裸体で,左脚の股に麻縄製の帯輪を着け,相互にこの輪の中に右腕を肘まで入れて四つに組み,押し,引き,ひねり,そりなどの技で攻撃し,相手の足裏以外を地に着ければ勝ちとなる。競技場は平地であればよく,土俵はない。旧暦5月5日の端午の節句の行事として1週間ぐらい全国各地で競技会が行なわれている。現在は韓国相撲とも呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内の朝鮮相撲の言及

【シルム】より

…主として朝鮮半島に居住する朝鮮族の間で伝えられてきた伝統的な力比べをいい,〈韓国相撲〉とも呼ばれる。ハングルでの表記に相当する漢字がないことなどから,朝鮮族の固有の伝統的なスポーツであると考えられている。歴史的には,5世紀ころまでさかのぼることができるといわれ,その証拠として,当時の高句麗の墳墓である角抵塚(現,中国吉林省集安)に力士を描いた壁画があり,これが最も古い朝鮮族の流れを汲むシルムの原型であると捉えられている。…

【端午】より

…中国にはじまり,朝鮮,日本でも行われる旧暦5月5日の節供。
[中国]
 蒲節,端節,浴蘭節などともいう。〈端〉は〈初〉の意味で,元来は月の最初の午の日をいった。十二支の寅を正月とする夏暦では,5月は午の月にあたり,〈午〉が〈五〉に通じることや陽数の重なりを重んじたことなどから,3世紀,魏・晋以後,5月5日をとくに〈重五〉〈重午〉〈端陽〉などと呼び,この日に各種の祭礼を行うようになった。旧暦5月は高温多湿の盛夏であり,伝染病や毒虫の害がはなはだしく,悪月とされた。…

※「朝鮮相撲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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