木戸番(読み)キドバン

デジタル大辞泉 「木戸番」の意味・読み・例文・類語

きど‐ばん【木戸番】

江戸時代市中木戸ごとに設けられた小屋。また、その番人
興行場木戸口を守り、客を引く番人。
一般に人の出入りする場所店先などで番をすること。

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精選版 日本国語大辞典 「木戸番」の意味・読み・例文・類語

きど‐ばん【木戸番】

〘名〙
江戸の町に設けた木戸の自身番屋。また、そこの番人。番所は中番、番人は番太郎ともいった。
御触書寛保集成‐三九・寛文二年(1662)九月「一、町中木戸番之者、夜中川岸棚下入念を相改」
芝居小屋、また相撲、見世物などの興行場の木戸口を守り、客を引いた番人。
仮名草子・都風俗鑑(1681)三「狂言のはてくちに、彼城戸(キド)ばんが『御評判御評判』と、息すぢはりてわめくがくだなり」
③ 転じて、一般に人の出入りするところの番をすることや、店先で客の来るのを待つことなどにいう。
滑稽本八笑人(1820‐49)三「蚊を入れられては恐れるから、おれが木戸番をしてやらう」

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改訂新版 世界大百科事典 「木戸番」の意味・わかりやすい解説

木戸番 (きどばん)

江戸時代に町々の木戸に設けられた番屋,番人。夜間は町の両側の木戸を閉ざし,通行人は番人が拍子木合図をして町送りにした。番人は番太郎とも呼ばれ,業務の片手間駄菓子鼻紙,ろうそく,わらじなどを売った。番人の給金は毎月晦日に,町の居住者から家主へ支払った銭で支給された。番人は防火夜回りも行い,病気や出産などの場合には,夜間でも潜戸(くぐりど)を開けて通行させたという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木戸番」の意味・わかりやすい解説

木戸番
きどばん

江戸時代に城下町の治安を守り放火を防ぐ目的で、江戸・京都・大坂などの町に設けられた町木戸の番人。俗に番太郎、番太ともよばれた。町から町への出入りの関門の用をなす中央2間半の大木戸の開閉を受け持ち、夜間町内を巡視して火災の警戒にもあたった。木戸は昼間はあけておくが、犯罪人が逃げ込んだり、喧嘩(けんか)など非常の際は、閉鎖して交通を遮断した。午後10時には木戸を閉める決まりで、それ以後は左右のくぐり戸から出入りさせた。この場合は「送り拍子木」を打って、通行人の存在を次の木戸に知らせた。私宅は別になく、木戸の傍らの番小屋に家族とともに住み、町内からの給金の足しに、焼きいも、駄菓子、荒物などを並べて売った。ほかに、芝居など興行場の木戸口の番人もいう。興行場の番人は、客引きの口上をつかい、客の出入りをさばいた。

[稲垣史生]


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世界大百科事典(旧版)内の木戸番の言及

【木戸】より

…ついで近世では,城下町の郭内への出入口などの軍事的要素の強い門のこともいうが,主として江戸・大坂などの大都市の表通りの町境の要所に設けられた門のことを意味するようになる。この木戸は,大きな町では1町単位,中小の町では数町単位で設置され,江戸の場合,その形態は,2間ほどの間隔で建てた柱の間に,両開きの扉をつり,両脇には道路際までの柵,または板塀がとりつき,そばには木戸番の番小屋があった。夜四つ時(午後10時)から朝六つ時(午前6時)までの夜間は閉じられ,木戸番の監視のもとに,脇の小木戸(またはくぐり戸)からのみしか通行できなかったので,犯罪人の逃亡防止に役だち,打ちこわしなど不穏な事態の際も,この要所の木戸を閉じることにより,他地域への波及を食い止めようとするなど,都市の治安維持の役割が大きかった。…

【番太郎】より

… 江戸の場合,番小屋であるとともに公用,町用を弁ずる会所の機能を併せもった自身番屋には,書役として裏店借(うらだながり)の者などが雇われていたが,彼らは自身番親方とは呼ばれても,番太または番太郎とは呼ばれなかった。江戸で番太または番太郎と呼ばれたのは,町の出入口に置かれた木戸番である。木戸番の仕事は,夜の四ッ時(午後10時)ごろに木戸を閉じ通行人をチェックしたり,夜間には拍子木を打って町内の夜警に回った。…

【夜警】より

…【飯田 悠紀子】 江戸時代は町の両端に木戸が設けられており,夜間はこの木戸を閉鎖して不審な者の通行を規制し,盗難の防止や防火に努めた。江戸では,木戸番(番太郎と呼ばれる)が夜10時で木戸を閉め,それ以後の通行人は潜(くぐ)り戸から通し,不審者は直ちにつかまえた。木戸番は木戸閉鎖後には,通行者のあったことを拍子木を打って次の木戸へ知らせたが,これを継ぎ送りという。…

※「木戸番」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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