木生シダ(読み)もくせいしだ(英語表記)tree fern

翻訳|tree fern

改訂新版 世界大百科事典 「木生シダ」の意味・わかりやすい解説

木生シダ (もくせいしだ)
tree fern

茎が立ち上がり,葉が大型になったシダ類シダ植物の茎は長く伸びる場合も地面をはって根茎になるのが普通であるが,いくつかの種では茎が直立して長く伸び,その周辺に不定根などが密にもつれ合ってつき,太い幹になって茎頂に展開する葉を支えているものがある。ヘゴ科のほとんどすべての種をはじめ,タカワラビ科,シシガシラ科などに,高い幹をつくる木生シダがあり,クワレシダなどの茎も高さが1m近くに伸びる。木生といっても,茎は肥大生長はしないので,をつくることなく,いわゆる木本とはいえない。木生シダの幹は中心に細い茎が通っているだけで,分枝することもほとんどなく,台湾から報告されたエダウチヘゴ小笠原の南硫黄島のムニンエダウチヘゴなどは珍しい例である。ヘゴの幹を薄く板状にしたものをヘゴ板といい,着生植物の栽培に重宝される。これは不定根が密にからみ合ったものだから水はけがよく,着生植物の根づきをよくするものである。また,ヘゴ板をとるために幹が切られてしまうとその個体は枯死してしまい,そのことがヘゴ類が各地で絶滅する原因の一つとなっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木生シダ」の意味・わかりやすい解説

木生シダ
もくせいシダ
tree fern

熱帯亜熱帯に広く分布する,茎が直立して高く伸びる大型のシダのことで,いわゆる木本とは異なる。そのほとんどはヘゴ科に属するもので,ほかにタカワラビ科も木生シダである。ヘゴ科は約 600~1500種から成り,茎は鱗片有し,複雑な中心柱をもち,茎頂に大型の羽状複葉を叢生するものが多い。葉柄には鱗片のほかにとげのあるものが多く,その形態はヘゴ科の分類に用いられる。一方,タカワラビ科は,環帯の様子から古くはヘゴ科に入れられていたが,鱗片がなく毛だけをもち,胞子嚢群が葉縁につくなどの点で,ヘゴ科から区別される。日本には,ヘゴ科のヒカゲヘゴ,マルハチ,クロヘゴ,ヘゴ,メヘゴなどや,タカワラビ科のタカワラビがある。ヘゴの茎はヘゴ材として,着生ランなどの栽培,アイビーの支柱などに利用されている。

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