本然の性(読み)ほんぜんのせい

精選版 日本国語大辞典 「本然の性」の意味・読み・例文・類語

ほんぜん【本然】 の 性(せい)

程朱学派でいう人間性格の理念的なありかた。悪の要素を全く含まない純粋至善の性で、万人が等しく持っているとされる。
談義本・成仙玉一口玄談(1785)三「朱子も動(ややも)すれば聖経を論註するに、復初本心本然(ホンゼン)の性(セイ)なんどと説て其事を弁ず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「本然の性」の意味・読み・例文・類語

ほんぜん‐の‐せい【本然の性】

中国宋代の儒学者が人間性について提起した学説の一。すべての人が平等に持っているとされる、天から与えられた自然の性。→気質の性

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の本然の性の言及

【性善説】より

…孟子の性善説では悪の起源を十分に説明することができない。そのため宋の朱熹(しゆき)(子)は孟子の性善説を継承しながらも,人の性を〈本然の性〉と〈気質の性〉とに分けて,この難点を解決しようとしたのである。性悪説【日原 利国】。…

【性即理】より

は本来善悪とは関係のない存在論的なカテゴリーであるが,朱子学では心を形づくる気は不善への可能性をはらむとみなすので,情=気の発動いかんによっては本来的に天から賦与されている善性=理がゆがめられるおそれがある。これを性の立場から言えば,人間の本性はゆるぎなき善であるがそれはあくまで理想態であって(これを本然の性と呼ぶ),理はつねに気と結合しており気を通してしか自己を現実化できず,またそもそも情のない人間はありえないので,現実の人間の性は純然たる善だとはけっして言えないのである(これを気質の性という)。このように朱子学では性善説にもとづきながらも,人間を楽天的・一面的にとらえず,理と気,性と情を峻別したうえで,気質の性から本然の性への復帰を主張するのである。…

※「本然の性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android