本草経集注(読み)ほんぞうきょうしっちゅう(英語表記)Běn cǎo jīng jí zhù

改訂新版 世界大百科事典 「本草経集注」の意味・わかりやすい解説

本草経集注 (ほんぞうきょうしっちゅう)
Běn cǎo jīng jí zhù

正しくは《神農本草経集注》といい,《集注本草》とも呼ばれる。500年ころに陶弘景が編纂した中国の本草書薬物書)。彼は当時伝存していた本草書のうちで365の薬品を収載していた《神農本草》(《本経》と略す)を底本にし,それに《名医別録》(《別録》)の365の薬品とその説を加え,合計730の薬品を収録する3巻の《神農本草経》を編纂した。その上巻総論で,《神農本草》の文のほかに薬物の分量,製剤法,病症別の用薬名と配合禁忌などを述べる。中,下巻各論であるが,《本経》で上中下の3品に分類されていた薬物を,玉石草木などその起源によって分類したのが特徴である。彼はそれとほとんど同時に各薬品についての自説を注として加えた7巻の書を著した。これが《本草経集注》で,注はかなり博物学的色彩を持っている。この書では《本経》と《別録》からの引用文と注は色と大きさを変えて区別してあった。この書は早く失われてしまったが,その後の本草書の中核となり,現存の《証類本草》からその内容を類推でき,日本の森立之などの復元本もある。
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世界大百科事典(旧版)内の本草経集注の言及

【仙薬】より

…このように《抱朴子》においては,仙薬の効能を説くことはもちろんであるが,その仙薬の精錬の方法,採集の方法などにも呪術的な意味が強調されている点が注目される。続いて梁の陶弘景は《神農本草経集注》を著し,730種の薬物を玉石,草木,虫獣,菓,菜,米食に分類し,時用,産地,およびその薬物の効能によってどのような方術が行えるかを注記している。陶弘景の《本草集注》は,後の薬学(本草学)の基礎を築いたものとして知られており,《抱朴子》に比して,菊花,人参,甘草,朮(じゆつ),枸杞(くこ),茯苓(ぶくりよう)などの草木薬にも注意が払われ,医薬としての色彩が増している点が注目される。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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