本説(読み)ほんせつ

精選版 日本国語大辞典 「本説」の意味・読み・例文・類語

ほん‐せつ【本説】

〘名〙
① (古くは「ほんぜつ」とも) 根拠となる確かな説。典拠。ほんぜち。
山槐記‐治承三年(1179)六月二二日「仍問由緒、申立本説不知」
和歌連歌謡曲などを作るとき、よりどころとする物語・詩・故事などの本文
連理秘抄(1349)「本説 大略本歌におなじ。三句に及ぶべからず。詩の心・物語、又俗にいひつけたる事も寄合にはなる也」
③ 話題にしている、この説。

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デジタル大辞泉 「本説」の意味・読み・例文・類語

ほん‐せつ【本説】

《古くは「ほんぜつ」とも》
根拠となる確かな説。典拠。
「この月、よろづの神達太神宮へ集まり給ふなどいふ説あれども、その―なし」〈徒然・二〇二〉
和歌・連歌・俳諧・能楽で、1句・1詞章を作るときの典拠となる物語・詩文・故事などの本文。
「脇の申楽さるがくには、いかにも―正しき事のしとやかなるが」〈花伝・三〉

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改訂新版 世界大百科事典 「本説」の意味・わかりやすい解説

本説 (ほんせつ)

〈ほんぜつ〉とも読む。根拠となる説の意。また和歌,連歌,俳諧,謡曲の創作にあたって典拠とした本文のうち,和歌以外の物語,漢詩文,故事,ことわざなどをいう。本説に依拠して詠歌することは,〈本歌取り〉と同様に,表現内容を豊かにし余情を深める技法として古くから行われたが,もっとも盛んであったのは新古今時代である。特に藤原俊成が《六百番歌合》の判詞で《源氏物語》尊重を主張して以来,《源氏物語》をはじめとする平安朝物語を典拠とすることが中世の歌人たちに広く行われた。また《白氏文集》《和漢朗詠集》なども重んじられた。《源氏物語》は連歌の方でも重視され,ために梗概こうがい)書も作られている。連歌の本説はそのまま俳諧に踏襲されるが,本説の範囲が俗諺(ぞくげん)や俗説にまで拡大されている。また世阿弥は能に脚色された題材が古典や正説に基づいていることを〈本説正し〉といい,能作の上で重要視している。
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