精選版 日本国語大辞典 「本郷」の意味・読み・例文・類語
ほん‐ごう ‥ガウ【本郷】
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秋穂湾を望む村で、湾の北方および東方にあたる。東は
中世を通じ
慶長五年(一六〇〇)の検地帳では二島村と合わせて秋穂庄と記され、同一五年の検地帳でも分離されずに秋穂村とあり、総石高三千六五六石余、うち田が二四二町余で二千五五一石余、畠は一〇一町余で五六七石余、ほかに浦屋敷が二八、小物成一二石余、浦浮役一二石余、塩浜方が三五六石余とある。「地下上申」で秋穂二島村と秋穂村に分れる。「注進案」では二島村と本郷に分けられ、本郷は「当村は秋穂庄本郷にして別に村名を唱へ不申候」と記される。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
東京都文京区南東部の地名。1~7丁目に分かれる。かつては広く湯島,駒込などを含む旧本郷区全域を指した。古くは〈本江〉とも記した。名称は《和名抄》に見える湯島郷(武蔵国豊島郡)の本郷に由来するといわれる。武蔵野台地の東端,神田川北岸の本郷台に位置し,藍染川や小石川の谷によって刻まれ,坂が多い。東京大学,順天堂大学など各種教育機関が集まる文教地区であるが,本郷通りには古本屋,医療器具店,旅館なども多く,商業地区を形成している。東京地下鉄丸ノ内線,都営地下鉄大江戸線が通じる。
執筆者:正井 泰夫
1559年(永禄2)成立の《小田原衆所領役帳》には小机城主北条氏秀の所領として〈百九十貫文 江戸本郷〉とみえる。当時は純農村であったが,徳川家康の関東入国(1590)以後,寛永(1624-44)の初めころまでに大半は武家地と化した。なかでも村域南部には小人,中間などの下級幕臣が大縄(組単位)で拝領した組屋敷が集中し,北部には加賀藩前田家,三河岡崎藩本多家などの広大な大名屋敷が並んだ。中山道が貫通する交通の要地であっただけに,町屋も早くから発達した。戦国時代末期に町屋形成が始まり,寛文(1661-73)以前に1~6丁目に分かれた。江戸時代前期には魚介類を扱う町人の町として栄え,1丁目には蜊店(あさりだな)横町,3丁目には肴店(さかなだな)と俗称される一角があった。肴店には1725年(享保10)日本橋の有名な呉服商伊豆蔵屋(いずくらや)吉右衛門が支店を開いて人気を集めたため,肴店は伊豆蔵横町とも呼ばれた。同じころ,3丁目には口中医師の兼康(かねやす)祐悦が薬種・小間物屋を開き,乳香散という歯磨粉を売り出したため,兼康横町という町名が生じた。このほか4丁目にも36年(元文1)笹屋という薬種屋が進出して光明膏という目薬を売り広め,これまた繁盛した。しかし川柳に〈本郷も兼康までは江戸の内〉とあるように,町場としてのにぎわいをみせたのは兼康の店がある3丁目あたりまでで,4丁目以北は明暦の大火(1657)の火元となった本妙寺などの寺院と武家屋敷が続くさびしい場所であった。
なお元和・寛永(1615-44)以降,下級幕臣の大縄拝領屋敷内にも町屋が次々と設けられ,1696年(元禄9)ころにそれぞれ町奉行支配となった。竹木商人が集住していた竹町,小人頭牧野金助の拝領地であった金助町,伊勢の御師(おし)春木太夫の旅宿があったという春木町,もとは菊畑であったという菊坂町などである。1878年本郷地域に湯島,根津など周辺地域を合わせ本郷区が成立した。1947年本郷区と小石川区が合併し文京区となった。
執筆者:大石 庄一 近代の本郷は加賀藩上屋敷跡地にできた東京大学を連想するほど学生の街としてのイメージが濃厚である。それにふさわしく本郷3丁目周辺は書店や喫茶店が多く,台町,菊坂町には文士や学者などの根城だったことで有名な菊富士ホテルの前身,菊富士楼をはじめ旅館,下宿屋および寄宿舎などが多かった。真光寺薬師の縁日が毎月12日,それに本郷電車通りの夜店のにぎわいが重なって,本郷は山手有数の盛場だった一時期があったが,しだいに白山(はくさん)の方へ移っていった。また文学者と本郷との関係も密接で,樋口一葉,二葉亭四迷,高山樗牛,徳田秋声,若山牧水,石川啄木,金田一京助,上林暁,田宮虎彦らは,いずれもこの地に借家住いをしたり止宿したりしている。
執筆者:小木 新造
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