杜順(読み)とじゅん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「杜順」の意味・わかりやすい解説

杜順
とじゅん
(557―640)

中国唐初の僧。華厳(けごん)宗の初祖。敬称は帝心(ていしん)尊者。諱(いみな)は法順(ほうじゅん)。雍(よう)州(陝西(せんせい)省)万年県の人。18歳で出家し、因聖(いんしょう)寺僧珍(そうちん)に師事して禅定(ぜんじょう)を学び、さまざまの神異を現した。やがてその名は宮中にも届き、一説には632年(貞観6)太宗(李世民)から「帝心」の号を賜ったという。没後華厳宗第一祖とされ、また、文殊(もんじゅ)の化身(けしん)とみなされるに至った。著書として『法界観門(ほっかいかんもん)』1巻が伝えられるが、疑問が多い。

[木村清孝 2017年3月21日]

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改訂新版 世界大百科事典 「杜順」の意味・わかりやすい解説

杜順 (とじゅん)
Dù Shùn
生没年:557-640

中国,隋・唐代の僧。僧名は法順。俗姓通称さる。雍州万年(陝西省長安県)の人。18歳で出家し隋の文帝に重んぜられた因聖寺僧珍に師事,のち終南山にて華厳を宣揚,唐の太宗は禁中に招き徳を仰ぎ,また貴顕こぞって帰依したという。640年(貞観14),義善寺に入寂したが,諸方を遊行して教化に当たり,華厳宗の開祖と称された。その著《華厳法界観門》は華厳の根本経典となり,彼の弟子で華厳第2祖の智儼撰《華厳一乗十玄門》によって発展拡充された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「杜順」の意味・わかりやすい解説

杜順
とじゅん
Du Shun

[生]永定1(557)
[没]貞観14(640).11.
中国,唐の僧。華厳宗の第1祖。名は法順,姓は杜氏。長安地方で生れ,18歳で出家し,のちに終南山隠棲して『五教止観』『法界観門』などを著わした。徳行が高く唐の太宗に招かれたという。現在では華厳宗の思想体系に貢献したことよりも,実践宗教家と考えられている。

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百科事典マイペディア 「杜順」の意味・わかりやすい解説

杜順【とじゅん】

中国,隋〜初唐の仏僧華厳宗の開祖。諱(いみな)は法順。俗姓が杜氏であったので,杜順という。18歳で出家し,因聖寺僧珍に学ぶ。のち終南山に隠棲(いんせい)した。華厳教学の基礎をすえた《華厳法界観門》はその著とされている。

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