来迎会(読み)らいごうえ

精選版 日本国語大辞典 「来迎会」の意味・読み・例文・類語

らいごう‐え ライガウヱ【来迎会】

〘名〙 仏語衆生浄土に導くために来迎する二十五菩薩に仮装して練り歩く法会源信がはじめたものともいわれる。毎年五月一四日(古くは陰暦三月一四日)奈良県当麻(たいまでら)で行なわれるものが有名迎接会(ごうしょうえ)練供養(ねりくよう)。《季・夏》 〔東都歳事記(1838)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「来迎会」の意味・わかりやすい解説

来迎会 (らいごうえ)

念仏行者が臨終のとき,仏・菩薩が迎えに来て,極楽浄土に引きとるさまを儀式化した法会。迎講(むかえこう),迎接会(ごうしようえ)ともいい,練供養(ねりくよう)とも俗称する。阿弥陀信仰に基づく法会である。源信が始めたと伝えられ,長久年間(1040-44)成立の鎮源の《本朝法華験記》には,弥陀迎接の相を構え,極楽荘厳の儀を顕したもので,世間では迎講と称されたと出ている。それは主として野外で行われる一種の宗教劇であった。今もなお二十五菩薩来迎会・同練供養などと称して,弥陀の来迎引接と念仏者の極楽往生を演じる法会があるが,これらは11世紀以降さかんに催された迎講の遺風であり,思想的にも儀礼的にも脈絡を有している。その代表的なものは当麻(たいま)寺の来迎会であるが,ここでは中将姫の往生の場面が演劇化されている。来迎会に必要なものは,舞台としては極楽と現世を表象した極楽堂と娑婆堂,それに両者を結ぶ懸橋,また装具としては仏菩薩の面と装束などである。仏菩薩には講員や,厄歳の希望者などが扮するが,大きな利益(りやく)があると信じられている。
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世界大百科事典(旧版)内の来迎会の言及

【お練り】より

…江戸においても山王祭,神田祭に出された山車人形の趣向は,ただちに歌舞伎舞台で踊られ,仮装の踊子行列や作り物の風流など,各町ごとの趣向が競われ,多くの番付が残る。寺院でのお練りは,浄土信仰にもとづき菩薩たちが来迎する様子を具現するもので,練供養(ねりくよう),来迎会(らいごうえ),菩薩練道などとも呼ばれる。奈良県北葛城郡当麻町の当麻寺や,京都市東山区即成院,大阪市平野区大念仏寺のものなどが有名で,京都の教王護国寺(東寺)などには,平安期から鎌倉時代の菩薩行道面も残る。…

【行道面】より

…その種類や数は法要の形式や時代によって異なるが,この仮装に用いる仮面を総称して行道面という。法要の形式が最も整った11~12世紀には,諸仏諸堂の落慶(らつけい)供養会や諸寺の舎利会,来迎(らいごう)会(迎講(むかえこう))などに,師子(しし)(獅子頭),師子子(ししこ)(蠅払),(くちとり)(口取,綱引),八部衆(輿舁(こしかき)),十二天,二十八部衆,菩薩,天童などの種類の面が用いられた。現在も行われる奈良法隆寺や大阪四天王寺の聖霊会には師子,師子子,の一群と八部衆が出,奈良当麻寺や東京浄真寺の来迎会には25の菩薩の面が用いられる。…

※「来迎会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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