杯事(読み)さかずきごと

精選版 日本国語大辞典 「杯事」の意味・読み・例文・類語

さかずき‐ごと さかづき‥【杯事】

〘名〙
① 杯をとりかわして酒を飲むこと。酒席で、杯を差したり受けたりすること。酒を酌みかわすこと。酒宴献酬
浮世草子好色五人女(1686)四「盃事(サカツキゴト)して、今は心に有程をかたりつくしなん」
約束を固めるために、杯をとりかわして、酒を飲むこと。主に、結婚式で、新郎新婦が三々九度の杯をとりかわし、夫婦のちぎりを結ぶ儀式をさしていう。
※天理本狂言・二九十八(室町末‐近世初)「目出たう、盃事をせう、かづきを、おとりやれと云」

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デジタル大辞泉 「杯事」の意味・読み・例文・類語

さかずき‐ごと〔さかづき‐〕【杯事】

杯を交わして酒を飲むこと。酒盛り。酒宴。
夫婦・親分子分兄弟分などの関係を結ぶことを誓って、同じ杯で酒を飲むこと。「新郎新婦杯事

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「杯事」の意味・わかりやすい解説

杯事
さかずきごと

杯を取り交わしながら酒を飲むこと。かつては、酒は神事に際して飲むものであったので、約束事を固めるために杯を取り交わす意味にもなった。とくに日本の婚礼儀式で、三三九度の杯を取り交わして夫婦の契りを結ぶ。それ以外の約束の固めにも、しばしば杯事が行われる。たとえば、侠客(きょうかく)仲間などは、杯に須恵器(すえき)を用い、杯を交わしたのち、それを割り捨てて契約を絶対化する風習もある。『古事記』の大国主命(おおくにぬしのみこと)の神話においても、須勢理毘売(すせりひめ)が正妻になる際、杯を献じ、「盃結(うきゆい)して頸懸(うなかけ)りて、今に至るまでしずまります」と歌っている。杯を取り交わして結婚の誓約とすることを盃結といい、男女が仲むつまじく互いに肩を組むことを頸懸りとよんでいるのである。沖縄の婚礼で、新郎新婦が同時に一つの杯から酒を飲む慣習があるが、台湾の高山(こうざん)族(高砂(たかさご)族)では兄弟の契りを結ぶときに、やはり抱き合って一つの杯で2人で酒を飲む。

[村田仁代]

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