東域伝灯目録(読み)とういきでんとうもくろく

改訂新版 世界大百科事典 「東域伝灯目録」の意味・わかりやすい解説

東域伝灯目録 (とういきでんとうもくろく)

平安時代の仏教図書目録編者は興福寺の永超(1014-95)。1094年(嘉保1)成立。中国,朝鮮,日本の学僧著述にかかる多くの論著,伝記などを集大成したもので,11世紀伝存の仏教学関係の著作を掲示する点,貴重な仏書目録ということができる。内容は弘経(ぐきよう)録,伝律録,講論録,雑述録,伝記録の5部門に分類しているが,雑述録と伝記録には明確な判別が行われておらず,雑述録に《東寺諸大師伝》《慈恩三蔵行状》などが含まれている。弘経録は華厳般若法華,衆経の4部に分類し,関係書名,巻数,著者名をかかげ,掲示の数は最も多い。本目録は多少の欠落はあるものの,各宗にわたる先師学僧の著作を幾多の困難を排して収集した苦心が察せられ,書名下に同本異名や所蔵寺院名を記入するなどの配慮が施されている点,後世のこの種の目録と大きな相違が認められる。選者永超は法相宗の碩学で,奈良斉恩(さいおん)寺や法隆寺別当にもなった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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