枕箱(読み)マクラバコ

デジタル大辞泉 「枕箱」の意味・読み・例文・類語

まくら‐ばこ【枕箱】

箱形木枕箱枕
枕を入れておく箱。ふつう5個または10個を入れる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「枕箱」の意味・わかりやすい解説

枕箱
まくらばこ

5個または10個の枕を入れておく箱、または木製箱型の枕に蓋(ふた)や引出しをつけて小物入れにも兼用する道具をいう。後者は、元来、長方形中空の箱を枕としたことから、これに引出しをつけてたばこや小物入れとしても利用されたが、しだいに錠前(じょうまえ)付きのものなどが現れて、枕としてよりも金銭など貴重品の保管に用いられるようになった。

 一方、漁師が船で沖へ出るときにも枕箱が携帯された。これは、菅江真澄(すがえますみ)の『小鹿(おが)の鈴風(すずかぜ)』に「横一尺あまり、煙草(たばこ)ほくす附竹、鉤などを入れ、之(これ)を夜は枕としてつゆも身を放たぬもの」と説明されているが、通常小形で中空の箱に防水防湿のため密閉式の印籠蓋(いんろうぶた)や引出しを備え、中には火打石やマッチなどの発火具、たばこなどを入れ、横になるときには枕にも使用するものである。地方によっては、オキバコ、チゲバコなどとよび、やや大形の木箱を船に携える場合もあり、大形のものには釣り用具や網用具、弁当なども入れた。枕箱には節分に用いた豆を入れておき、海上で船が方角を失ったときに撒(ま)けば占えるという所や、賽(さい)を入れておく所もあり、この海上での呪物(じゅぶつ)に対する信仰船霊(ふなだま)信仰につながるものがある。

[野口武徳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android