枯草菌(読み)コソウキン(英語表記)hay bacillus
Bacillus subtilis

デジタル大辞泉 「枯草菌」の意味・読み・例文・類語

こそう‐きん〔コサウ‐〕【枯草菌】

好気性細菌の一。大気・枯れ草・下水土壌の中に存在する大形の桿菌かんきん病原性はない。鞭毛べんもうをもち、炭水化物を分解して酸を作る。

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精選版 日本国語大辞典 「枯草菌」の意味・読み・例文・類語

こそう‐きん コサウ‥【枯草菌】

〘名〙 桿菌(かんきん)科の好気性細菌。非病原性の細菌で、空気中、枯草、下水、土壌中など自然界に広く分布する。大きな桿状菌で鞭毛(べんもう)がある。灰白色の大きな集落をつくり、炭水化物を分解して酸を生成する。米飯腐敗主因は、この菌によるといわれている。
風俗画報‐三五〇号(1906)衛生門「枯草菌(コサウキン)を発見して」

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改訂新版 世界大百科事典 「枯草菌」の意味・わかりやすい解説

枯草菌 (こそうきん)
hay bacillus
Bacillus subtilis

土壌,枯草など広く自然界に分布する細菌。枯草からよく分離されるのでこの名がある。英名もそれに由来する。好気性の杆菌で,耐熱性の胞子を形成する。グラム陽性。生細胞は0.7~0.8μm×2.0~3.0μm程度の大きさで,周鞭毛により運動する。胞子は細胞の中央または中央よりやや離れたところに形成され,卵形または円筒形である。胞子は数時間の煮沸にも耐えるので,胞子の滅菌高圧滅菌によらなければならない。液体培養では表面にややしわのある皮膜を形成する。みそ,しょうゆのもろみにも多数存在し,これらの熟成にも関係している。一方,米飯,パン,ハム,ソーセージなどの腐敗の原因となり,いわゆる糸をひく腐敗は枯草菌によるものが多い。強力なアミラーゼプロテアーゼを生産するので,これらの酵素の工業的生産に用いられている。糸引納豆は煮沸した大豆に,稲わらに自然に付着している納豆菌,また純粋分離した納豆菌を生育させてつくる発酵食品であって,納豆菌は分類学的にはB.subtilisである。枯草菌は形質転換などの遺伝学の研究に用いられているが,最近では遺伝子操作の研究にも用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「枯草菌」の意味・わかりやすい解説

枯草菌
こそうきん
[学] Bacillus subtilis

真正細菌目バチルス科に属するグラム陽性の細菌で、胞子(芽胞(がほう))を形成し、好気性。かつて納豆(なっとう)菌B. nattoや馬鈴薯(ばれいしょ)菌B. mesentericusとよばれたものも同種である。形態は通常、桿(かん)状で、ときには短桿状、長桿状となる。0.5~2.5×1.2~10マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)。周鞭毛(べんもう)をもち、胞子は卵形である。発育はきわめて早く、寒天培養基上では灰白色で平滑、またはわずかに皺(しわ)状の集落(コロニー)をつくる。集落は円形ないしアメーバ状で、粘質性である。ゼラチンは速やかに液化し、含糖液体培地ではガスを生産せず、また牛乳を凝固しないで、徐々にアルカリ性となる。発育温度は30~37℃である。

 自然界に広く分布し、強力なタンパク、デンプン分解酵素のほか、ペクチン分解酵素を生産する。ときには抗生物質を生産し、納豆のほか酵素剤の製造にも応用され、この方面での研究が進んでいる。発酵工業や種菌培養の雑菌として有害菌であるが、胞子はきわめて抵抗性が強いため、滅菌という場合は、本菌を絶滅することを意味すると考えてよい。

[曽根田正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「枯草菌」の意味・わかりやすい解説

枯草菌
こそうきん
Bacillus subtilis; hay bacillus

真正細菌目,バチルス科の細菌の一種で,好気性でしかも芽胞を形成する代表的な菌種。土壌,枯草,塵埃,下水中など,自然界に広く存在している。納豆をつくるときに使うのはこの菌の一種。病原性はほとんどないが,結膜炎,虹彩炎,全眼球炎などを起すこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の枯草菌の言及

【バシルス】より

…また脱窒能を有する菌種も知られている。枯草菌B.subtilisのアミラーゼ,プロテアーゼは工業的に生産されている。一方,セレウス菌B.cereusは食品の腐敗に関係し食中毒の原因菌となる。…

※「枯草菌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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