栄螺・拳螺(読み)さざえ

精選版 日本国語大辞典 「栄螺・拳螺」の意味・読み・例文・類語

さざえ【栄螺・拳螺】

[1] 〘名〙
① リュウテンサザエ科の巻き貝。房総半島以南の暖流の影響を受ける海域に限って分布する。殻高約一〇センチメートルで殻はよくふくらむ。表面にとげが二列に並ぶが、内湾産のものは小さく、またまったく無いものもある。外面はふつう暗青色で内面は真珠色。殻の口は円形で、ふたは石灰質で厚く、渦巻き状。潮間帯から潮下帯の岩礁にすみ、海藻を食べる。古くから食用にされ、つぼ焼きは有名。春から初夏にかけてが旬(しゅん)である。缶詰にもされる。殻は貝ボタンや細工物に利用。さざい。さだえ。さたべ。さざいがい。《季・春》
出雲風土記(733)出雲「気多嶋〈紫菜海松生ふ〉鮑・螺(さざえ)・蕀甲嬴有り」
② ①に似た兜(かぶと)の鉢の名。
※会津陣物語(1680)四「岡野左内は黒具足に猩々緋羽織を着し、角栄螺の南蛮甲を猪頭になし」
③ 七種蓋置(しちしゅふたおき)の一つ。①の形に作ったもの。
※雑俳・柳多留‐一二四(1833)「五百人栄螺ひとつを白眼(にらん)てる」
⑤ 紋所の名。①をかたどったもの。
[2] 狂言。鷺流。舞狂言。旅僧供養で成仏したサザエの精がいったん姿を消したのち、サザエの姿で再び現われ、最期の時の様を語る。江戸初期の大蔵虎明本に見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android