桐城派(読み)トウジョウハ(英語表記)Tóng chéng pài

デジタル大辞泉 「桐城派」の意味・読み・例文・類語

とうじょう‐は〔トウジヤウ‐〕【×桐城派】

中国、清代の文章家一派安徽あんき省桐城県出身の方苞ほうほうに始まり、劉大櫆りゅうだいかいを経て姚鼐ようだいに至って大成。唐宋の古文規範として文章の典雅さを尊んだ。

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精選版 日本国語大辞典 「桐城派」の意味・読み・例文・類語

とうじょう‐は トウジャウ‥【桐城派】

〘名〙 中国、清代の古文家の一派。明の帰有光のあとを承け、方苞(ほうほう)劉大櫆(りゅうだいかい)らが唱え、姚鼐(ようだい)に至って大成した学派。宋の性理学義理)、漢の訓詁学考拠)、唐宋の古文(詞章)があいまって学問が開けるとするもの。この派の学者がみな安徽省桐城の人であったところからいう。〔国朝先生事略‐文苑・姚姫伝先生事略〕

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改訂新版 世界大百科事典 「桐城派」の意味・わかりやすい解説

桐城派 (とうじょうは)
Tóng chéng pài

中国,清代古文の一派,また最大の文学流派名。安徽省桐城県出身の方苞(ほうほう)が基礎をつくり,継承者の劉大櫆(りゆうだいかい),姚鼐(ようだい)がいずれも同県出身のために,この名がある。明代の唐・宋派の系譜に立ち,宋学の学統を守る〈道の文学〉を目ざして文章の〈義法〉,すなわち内面的理法と外形的法則の調和を説き,簡潔で質実な文章を書いた。劉大櫆は方苞に師事し,〈義法〉理論を拡大し,文章は〈神気〉である精神を主として,気分はこれを輔(たす)けると説き,文字の音調も重んじた。《古文辞類纂》の編者姚鼐は劉大櫆に学び,文壇の指導者として活躍し,また漢学派との折衷を試みた。漢学の批判者方東樹も同派の理論家である。清末には文壇・政界の実力者曾国藩が出て,いっそう折衷学の傾向を強め,経書の文章も文学とみなし,政治・経済の2類を加え《経史百家雑鈔》を編集した。李鴻章もその弟子であり,厳復,林紓も欧米の思想・文学の紹介を桐城派古文の作者として行っている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「桐城派」の意味・わかりやすい解説

桐城派
とうじょうは

中国、清(しん)代におこった古文の流派。「どうじょうは」ともいう。清代中期に方苞(ほうほう)、劉大櫆(りゅうたいかい)が主張し、姚鼐(ようだい)によって集大成された文章理論を信奉する一派。方・劉・姚がみな安徽(あんき)省桐城県の人であるため、この名がついた。その理論は、直接的には明(みん)の帰有光(きゆうこう)の説を継承し、唐宋(とうそう)八家の古文に連なるが、新たに儒教理念を内容とする「義」と、俗語や麗辞を排して質実な文を書くべきだとする「法」とを重視した義法説を唱えた。当時の漢学家の訓詁(くんこ)と駢文(べんぶん)家の修辞に反対して、厳格なまでに文章の典雅さを追求した。姚鼐が『古文辞類纂(こぶんじるいさん)』75巻を編んで古今の古文の模範を集めたほか、数多くの古文の選集が編纂された。この典雅と平淡を尊ぶ主張は実用性とも相まって人々に歓迎され、清末のみならず民国に入っても大きな力を保っていたが、民国初年の文学革命で打倒の対象となった。

[佐藤 保]

『青木正児著『清代文学評論史』(1950・岩波書店/『青木正児全集1』所収・1969・春秋社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桐城派」の意味・わかりやすい解説

桐城派
とうじょうは
Tong-cheng pai

中国,清の散文の一派。提唱者の方苞 (ほうほう) ,継承者の劉大かい (りゅうだいかい) ,姚 鼐 (ようだい) がすべて安徽省の桐城県の人なのでこの名がある。いわゆる唐,宋の古文を宗とし,内容と形式の一致を説き,質実,簡潔で高い格調を理想とするもので,姚 鼐がその模範文を『古文辞類纂』に編集し,その後も方東樹曾国藩ら後継者を得て,清の中期以降民国初期まで文壇の主流を保ち続けた。

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世界大百科事典(旧版)内の桐城派の言及

【中国文学】より

… 清朝でも古文の勢力は衰えなかった。その主流は桐城(とうじよう)派とよばれ,開祖とされるのは方苞(ほうほう)で,姚鼐(ようだい)がこれを盛んにした。この派は帰有光の文を高く評価する。…

【陽湖派】より

…中国,清代の文学流派。清代最大の古文の流派である桐城派の支派。劉大櫆(りゆうだいかい)より古文を学んだ江蘇省陽湖の惲敬(うんけい)および陸継輅(りくけいらく),考証学と兼修した同じく陽湖の張恵言(ちようけいげん)らが主唱した。…

※「桐城派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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