桶・麻笥(読み)おけ

精選版 日本国語大辞典 「桶・麻笥」の意味・読み・例文・類語

お‐け を‥【桶・麻笥】

〘名〙
① (麻笥) 細く裂いて長くつないだ麻を入れておく円筒形のうつわ。檜(ひのき)の薄板を曲げてつくる。おごけ。
万葉(8C後)一四・三四八四「麻苧(あさを)らを遠家(ヲケ)にふすさに績(う)まずとも明日(あす)来せさめやいざせ小麻に」
② (①から転じて) 杉または椹(さわら)の細長い板を縦に並べ合わせて輪にして底をつけ箍(たが)でしめた円いうつわ。柄(え)のあるものもあり、つるをつけてさげるものもある。古くは板をまげて作った。火桶、水桶などがある。
※霊異記(810‐824)下「笥(ヲケ)に入れて山の石の中に蔵め置き〈真福寺本訓釈 笥 乎介〉」
※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)上「五かうにてんもひらくれば、かまとおうこと、をけとひしゃくをまいらする」
能楽の舞台で役者が腰をかける床几(しょうぎ)鬘桶(かつらおけ)
※禅鳳雑談(1513頃)中「おけにこしをかけるまへより小袖のかたをよくとち候」
[語誌](1)正倉院文書によると、「笥」に「笥坏・盤代笥・田笥・大笥・小笥」等があり、食膳で米や副食物、調味料等を盛る曲物(薄板をまげて作った容器)を総称している。
(2)板を並べて箍(たが)でしめたものは、中国では一二世紀頃から製造が確認でき、日本では鎌倉後期の絵巻物に描かれている。醸造業発達商品流通拡大に伴い、室町期に広く普及する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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