植物性鞭毛虫類(読み)しょくぶつせいべんもうちゅうるい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「植物性鞭毛虫類」の意味・わかりやすい解説

植物性鞭毛虫類
しょくぶつせいべんもうちゅうるい

原生動物の肉質鞭毛虫門鞭毛虫亜門の1綱Phytomastigophoreaを構成する単細胞生物群。有色鞭毛虫類あるいは鞭毛藻類ともいう。単細胞で鞭毛を生じ、色素体中にクロロフィルaを含有、光合成を行い分子状酸素を放出する。渦鞭毛虫類(うずべんもうちゅうるい)の一部が二型核をもつ以外は胞状の単核で、鞭毛は原則として2本。1本の場合でも細胞内にほかの1本が潜在するか、または基底小体は2個存在する。多鞭毛はつねに2の倍数である。むち形のほかに、鞭毛の片側または両側に側毛を列生する羽形鞭毛もみられる。これらの鞭毛は遊泳のほか、摂食、付着、感覚器官としても役だつ。種々の形状をした色素体にはクロロフィルaのほか、クロロフィルb、c1、c2や、ビリタンパク質、カロチノイド類が異なる組合せで含有されていて、各群の特徴となっている。色素体を欠き従属栄養の種もあるが、この場合も有色群との間に明瞭(めいりょう)な形態的類縁が認められる。細胞外に各群に特有の外皮、殻、殻板、小棘(しょうきょく)、精巧な鱗片(りんぺん)、甲、ロリカなどを形成し、また細胞内にケイ酸質の骨格をもつものもある。大多数が自由生活で、淡水から海水まで広く生息している。

 原生動物学では本綱を10目に分類するが、藻類との接点に位置するため、植物学では別の10群(綱に相当)に分けることが多い。いずれの場合も各分類群間には系統的な関連はない。この群のなかでは、キロモナスChilomonas、渦鞭毛虫類Dinoflagellida、ミドリムシEuglena、トラキロモナスTrachelomonas、クラミドモナスChlamydomonas、ゴニウムGonium、ボルボックスVolvoxなどが有名である。

[石井圭一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の植物性鞭毛虫類の言及

【原生動物】より

…(1)鞭毛虫綱Flagellata この門の中でもっとも原始的な群で,1本かそれ以上の鞭毛をもっていて,運動に役だてる。鞭毛虫は植物性鞭毛虫類と動物性鞭毛虫類とに二大別される。前者にはミドリムシ,オオヒゲマワリ,ツノオビムシヤコウチュウなどが含まれ,淡水や海水中で生活する。…

【鞭毛虫】より

…核は通常1個。 鞭毛虫類は植物性鞭毛虫類Phytomastigophoraと動物性鞭毛虫類Zoomastigophoraとに大別される。植物性鞭毛虫類はふつう緑色のクロロフィルをもつが,カロチンやキサントフィルその他の色素を含むものもあって,独立栄養を営む。…

※「植物性鞭毛虫類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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