日本大百科全書(ニッポニカ) 「検閲(精神分析)」の意味・わかりやすい解説
検閲(精神分析)
けんえつ
censorship
精神分析の用語としては、衝動が意識の表面に現れようとするとき、その衝動を評価し批判する機能のこと。超自我および自我は検閲の機能をもち、検閲することによってもとの衝動を意識によって受け入れることができるように変容させる。検閲の働きは夢においてもっともよく観察することができる。睡眠中には昼間と違って検閲が緩められるので、無意識的願望は意識に現れやすくなってくるが、まったく検閲が行われなくなるわけではないから、無意識的願望は検閲の目をごまかすことができるように変更され、移し換えられたり、類似のものに置き換えられ比喩(ひゆ)的に表現されたりする。修辞学の用語でいえば、換喩的、隠喩的に表現される。夢は願望の充足であるといわれるが、不安の夢や恐怖の夢のように、一見したところ願望が充足されていないようにみえるのは検閲の働きによって、無意識的願望が歪曲(わいきょく)された形で充足されているからである。検閲は一つの系(審級)から高次の系への通路に存在するもので無意識と前意識の間では抑圧として機能し、前意識と意識の間では抑制として機能している。
[外林大作・川幡政道]
『ジークムント・フロイト著、高橋義孝訳『夢判断』上下(新潮文庫)』