(読み)かまう

精選版 日本国語大辞典 「構」の意味・読み・例文・類語

かま・う かまふ【構】

[1] 〘他ハ下二〙 ⇒かまえる(構)
[2] 〘自ワ五(ハ四)〙 (心構えをする意の下二段動詞「かまふ」が四段活用化して、心にかまえて事をする状態にあることをいう自動詞になったものか)
① あることに、特に心を向ける状態にある、特に関心を持つ気持をいう。関係を持つ。関係がある。関知する。また、こだわる。気を使う。干渉する。助詞「に」を伴って「…にかまふ」の形で多く用いられ、また、多くは下に否定の表現を伴う。
日葡辞書(1603‐04)「ヒトニ camauanu(カマワヌ)
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉電影「盗賊(どろぼう)の妾(めかけ)にならうと乞食の妾にならうと貴郎の係(カマ)った事ッちゃ無い」
② (関係を持った結果)さしさわる。さしつかえる。→かまわない
※本福寺跡書(1560頃)「関をとるに、万端かまふ儀多かるべし」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「猫であらうが、あるまいが斯うなった日にゃあ構ふものか」
③ (ある事に関して、それに気を使うところから) 面倒をみる。世話をする。かばう。
※仮名草子・清水物語(1638)下「さきさきまでかまふといふ事はわたくしなり。かまひあるは宗庿(そうべう)の臣一品成べし」
※土(1910)〈長塚節〉一「お品は平常(いつも)のやうに鶏抔(など)へ構(カマ)っては居(を)られなかった」
④ 相手としてあしらう。相手になる。また、無用の働きかけをする。また、酒食などでもてなす。
※洒落本・史林残花(1730)芸文志「進酒曰(カマフ)、曰碍、曰間」
※桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉二四「おかみさん、もう何にも構はないで下さいな。お茶も沢山」
⑤ 獣や鳥が交尾する(日葡辞書(1603‐04))。
[3] 〘他ハ四〙
禁制にする。また、追放する。
※俳諧・物種集(1678)「日本半分かまはれにけり 鞘当や源平互に急度見て〈宗因〉」
歌舞伎・早苗鳥伊達聞書(実録先代萩)(1876)六幕「悪事荷担をした事が、誰いふとなく年寄衆の耳へはひって仲間を構(カマ)はれ」
② ((二)④の「相手としてあしらう」気持が発展して) その対象をからかったり傷つけたりする。相手にしてふざける。
和英語林集成初版)(1867)「ダレワ オマイエヲ kamatta(カマッタ)

かまえ かまへ【構】

〘名〙 (動詞「かまえる(構)」の連用形の名詞化) 自然なものに対して、人為的につくられたものや、たくらんだこと。
① かまえること。つくり。結構。構造。かまい。
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「白峯の御墓に尋参って拝奉れば、纔(わづかに)方形の構(カマヘ)を結置といへ共、荒廃の後修造の功もいたさず」
② つくったもの。邸宅。家屋敷。また、それを囲む一区画。囲い。とりで。
※高倉院升遐記(1182)「蓬来宮のうちにあらたなるふみをつくりて、十二楼のかまへをかきあつめさせ給へるもしほ草」
③ 工夫。計画。はかりごと。こしらえごと。工作。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「人よりはまめなるとさかしがる人しも、殊に人の思ひ到るまじき隈(くま)あるかまへよ」
④ 用意。準備。したく。そなえ。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「『いささか人に知らるまじきかまへは、いかがすべき』と宣へば」
⑤ 人の姿や態度。
(イ) 恰好(かっこう)。様子。姿勢。身がまえ。
※打聞集(1134頃)慈覚大師入唐間事「迯べき構へをし給」
(ロ) 身体の部分のつくり。特に、顔かたち。
※歌舞伎・独道中五十三駅(1827)四幕「此あたりに名医あって、顔の構(かま)へも大方は直ったとの事」
(ハ) 武道での基本姿勢。体や精神のそなえ。「正眼の構え」
※歌舞伎・小袖曾我薊色縫十六夜清心)(1859)序幕「いつぞや俺が構への時、言ひ渡しの役人に、瓜を二つのあいつが面付(つらつき)
漢字の部首の名称。「門がまえ」「国がまえ」など。
将棋で、ある陣形を作ること。また、その陣形。

かま・える かまへる【構】

〘他ア下一(ハ下一)〙 かま・ふ 〘他ハ下二〙
① 組み立てて造る。
※万葉(8C後)九・一八〇一「玉桙の 道の辺近く 磐(いは)(かまへ) 作れる塚を」
※名語記(1275)六「いかめしげなる木どもにて、つよく、かまへたる戸の事也」
② 前もって用意する。
※書紀(720)斉明六年七月(北野本訓)「媚(こひ)天子に請して禍を隣の国に投(いた)して斯の意行(こころ)を構(カマフ)
※竹取(9C末‐10C初)「綱をかまへて、鳥の、子うまん間につなをつりあげさせて」
③ 事を成そうとして、工夫する。計画をめぐらす。
蜻蛉(974頃)中「いとこころやすしと聞く人なれば、なにか、さわざわざしうかまへ給はずともありなん」
※栄花(1028‐92頃)月の宴「みかどを傾け奉らんとかまふる罪によりて」
④ 作り事をする。わざわざ作り上げる。ある考えをおこす。たくらむ。
※将門記承徳三年点(1099)「虚言を心中に巧(カマヘ)て、謀叛の由を奏す」
⑤ 態度や物などをある状態におく。ある姿勢をとる。身構える。身じたくする。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「主とおぼしき人はいとゆかしけれど、見ゆべくもかまへず」
※日葡辞書(1603‐04)「ヤリ カタナ ナドヲ camayete(カマエテ) イル」
⑥ 犬がほえる。いがみあう。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
[補注]室町時代頃からヤ行にも活用した。→かまゆ

かまい かまひ【構】

〘名〙 (動詞「かまう(構)」の連用形の名詞化)
① かまうこと。かかわること。こだわること。気を使うこと。関係。世話。骨折り。おかまい。
※仮名草子・清水物語(1638)下「さきざきまでかまふといふ事はわたくしなり。かまひあるは宗庿(そうべう)の臣一品成べし」
② さしつかえ。故障。邪魔。
※寒川入道筆記(1613頃)愚痴文盲者口状之事「此折かみを見るかほにて、中通りの折目をもかまひなくひろげて」
③ 手落ち。つみ。とが。違法。また、違法としてのとがめ。おかまい。
※御当家令条‐二二・町奉行衆役人手前之扣(1663頃か)「一町人下人を手討之事、尤主人には搆無之」
④ 江戸時代の刑罰の一つ。罪状によって、範囲を定め、その居住地から追放するもの。また、特定の職業につくことを禁ずること。公刑として行なわれる場合と、私刑として行なわれる場合がある。一宗構、一派構、神職構、奉公構の類。おかまい。かまえ。〔禁令考‐前集・第一・巻三・寛永九年(1632)九月二九日〕
※集義和書(1676頃)一四「今の世にかまひといひて、一代奉公ををさへて先々をふせぎて困窮せしむることは、或は死罪、流罪の罪につぐ者なれば」
※西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一二「台場の堅固なるは、世界中第一番ともいふべき構(カマ)ひにして」

かま・ゆ【構】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞「かまふ」から転じて、室町頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「かまゆる」の形をとる) =かまえる(構)
※両足院本周易抄(1477)四「我心中一つものうかまゆる心があらば虚受人ではあるまいぞ」
※日葡辞書(1603‐04)「シロヲ camayuru(カマユル)

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デジタル大辞泉 「構」の意味・読み・例文・類語

こう【構】[漢字項目]

[音]コウ(漢) [訓]かまえる かまう
学習漢字]5年
組み立てる。かまえる。「構成構想構造構築仮構虚構
組み立て。「機構結構
かこい。「構外構内遺構

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改訂新版 世界大百科事典 「構」の意味・わかりやすい解説

構 (かまい)

江戸時代の一種の追放刑。〈かまえ〉とも読む。特定地域から排除する場合と,特定団体・社会関係から排除する場合とがあった。日本国外追放を日本国構と称したことなどは前者の例であるが,後期幕府法においては,刑名はおもに追放,払(はらい)の語を用い,立入り,居住制限区域をとくに御構場所(おかまいばしよ)と呼んでいた。一方団体・社会関係からの排除として《公事方御定書》には,僧尼の閏刑で追院,退院より重い一宗構(所属宗旨からの追放),および一派構(宗旨中の所属宗派からの追放)の刑名がある。さらに武家が家中に科する刑罰的処分に奉公構があった。これは家臣が主従関係を離れる際,将来他家へ召し抱えられることを禁ずるもので,1635年(寛永12)の武家諸法度および諸士法度によって幕府法上も保障された。以後主家からの出奔は武士にとって容易なことではなくなった。近代に至って,追放刑の廃止,封建的身分制度の廃止により構の概念も消滅したが,1887年の保安条例は,内務大臣山県有朋が,民権家に対する〈江戸御構〉として構想した立法であった。
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動植物名よみかた辞典 普及版 「構」の解説

構 (カジノキ・カジ;カミノキ)

学名:Broussonetia papyrifera
植物。クワ科の落葉小高木・高木,薬用植物

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