精選版 日本国語大辞典 「様」の意味・読み・例文・類語
よう ヤウ【様】
[1] 〘名〙
[一] 物事のありかた。
① 様子。目に見える状態。ありさま。
② 外見の形。姿。形状。
※枕(10C終)一〇三「真名(まんな)のやう、文字の、世に知らずあやしきを見つけて」
③ 外見にこめられた意味。子細。わけ。事情。道理。「ようあり」の形で用いられることが多い。
※竹取(9C末‐10C初)「死に給ふべきやうやあるべき」
④ 慣習として決まっているしかた。方式。様式。流儀。
※土左(935頃)承平五年二月四日「死し子かほよかりきといふやうもあり」
⑤ ある事を実行するための方法。やり方。てだて。手段。
※竹取(9C末‐10C初)「其山を見るにさらにのぼるべきやうなし」
⑥ 言う、思うなどの内容、また、そのほかの行為や事柄の実現のしかた。
※土左(935頃)承平五年一月元日「ただ押鮎のくちをのみぞすふ。このすふ人々のくちを、押鮎もし思ふやうあらんや」
⑦ 同類。一類と考えられるもの。
※源氏(1001‐14頃)夕霧「かならず、さしも、やうのこととあらそひ給はむもうたてあるべし」
[二] 形容動詞の用法に準じて用いる。
① 推量される様子を表わす。断言をやわらげていう。
※土左(935頃)承平五年一月一八日「その歌、よめる文字、三十文字あまり七文字、人みなえあらで笑ふやうなり」
② その事態そのままの様子、今にもそうなりそうな様子であることを表わす。
※竹取(9C末‐10C初)「匠らいみじくよろこびて、思ひつるやうにもあるかな」
③ 比喩の用法。よく似た事物をあげて、性質や状態を説明する。
(イ) 体言を受ける場合。
※竹取(9C末‐10C初)「みまなこ二にすもものやうなる玉をぞそへていましたると云ければ」
(ロ) 用言の叙述を受ける場合。
※伊勢物語(10C前)八七「その滝、物よりこと也。長さ二十丈、広さ五丈許なる石のおもて、白絹に岩を包めらんやうになむありける」
④ 例示。
(イ) 物事の一例をあげたことばを受けて、それと同様の物事を表わす。
※天草本平家(1592)一「ヲゴリ ヲ キワメ、ヒト ヲモ ヒト ト ヲモワヌ yǒ(ヤウ)ナル モノ ワ ヤガテ ホロビタ ト ユウ ショウゼキ ニ」
(ロ) 「と」「など」を受けて、一例をあげて全体をぼんやり示し、また、例示と同類のものを漠然と示す。
※源氏(1001‐14頃)夕霧「なからむのちの後見にとやうなることの侍りしかば」
※源氏(1001‐14頃)夢浮橋「天狗こだまなどやうの物の、欺きゐて奉りたりけるにや」
[三] 形式名詞として用いる。
① 言う、思うことの内容。「言う」「思う」などの語を受けて、その内容を以下に述べることを予告するのに用いる。「に」などを伴わない。
※竹取(9C末‐10C初)「翁よろこびて家に帰りてかぐや姫にかたらふやう、かくなん御門のおほせ給へる」
② (「ように」の形で) ある行動に対する望ましい方法、形式や目的、期待する達成の状態を示す。
※平家(13C前)一一「あつき比なれば、首の損ぜぬ様にはからひ」
③ (「…のように」の形で) 地名などを受けて方向を示す。
※上井覚兼日記‐天正一一年(1583)八月一六日「此日、海江田之様に罷帰候」
[2] 〘語素〙
① 名詞に付く。
(イ) 例示を受けてそれと同類の事物・事柄を漠然と表わす。
※源氏(1001‐14頃)濡標「中将・中務やうの人々には、程々につけつつ」
(ロ) きまったやり方の意を表わす。ふう。流儀。慣習の様式。
※源氏(1001‐14頃)総角「ことやうなる女車のさまして、かくろへ入り給に」
② 動詞の連用形に付く。そうする方法、その動作のやり方。
※平家(13C前)四「道ゆき人が立ちとどまって、はしたなの女房の溝の越えやうやとて」
[語誌](1)上代には見えず、中古以降盛んに用いられた。単独で名詞としても用いられるが、「なり」を伴って「やうなり」の形で一まとまりの助動詞的形式として用いられることもある。この「やうなり」は比況・例示の助動詞「ごとし」と同様の意味を表わすものだが、「ごとし」はもっぱら漢文訓読体で用いられ、和文にはほとんど見えないのに対し、「やうなり」は漢文訓読体には見えず和文で盛んに用いられて、殊に「やうに」「やうなる」の形が多い。→ようだ(様━)。
(2)「やうに(ように)」が活用語を承けて従属節的に用いられる用法は、今日に至るまでよく用いられているが、そのうち、(一)(二)③(ロ)の使い方は、既に中古から見られる。しかし、(一)(三)②のような目的・企図を表わす例とはっきり認められるものは、中古には見られず、中世以降に出現する。
(3)この用法は近世に入る頃にはいっそう勢力を増すが、一方、これと並んで、単独の名詞としての用法や、(一)(三)①のような引用句を導く用法は、衰退していく。すなわち、「やう(よう)」は、名詞としての性格が乏しくなり、助動詞的な形式(ようだ)や、(一)(三)の形式名詞(よう、ように)として用いられることがもっぱらとなっていく。
(4)この語は漢語とみるのが一般的だが、和語とみる説もある。
(2)「やうに(ように)」が活用語を承けて従属節的に用いられる用法は、今日に至るまでよく用いられているが、そのうち、(一)(二)③(ロ)の使い方は、既に中古から見られる。しかし、(一)(三)②のような目的・企図を表わす例とはっきり認められるものは、中古には見られず、中世以降に出現する。
(3)この用法は近世に入る頃にはいっそう勢力を増すが、一方、これと並んで、単独の名詞としての用法や、(一)(三)①のような引用句を導く用法は、衰退していく。すなわち、「やう(よう)」は、名詞としての性格が乏しくなり、助動詞的な形式(ようだ)や、(一)(三)の形式名詞(よう、ように)として用いられることがもっぱらとなっていく。
(4)この語は漢語とみるのが一般的だが、和語とみる説もある。
さん【様】
〘接尾〙 (「さま(様)」の変化した語)
① 体言または体言に準ずるものに付いて、その方向、方面の意を添える。かた。
② 人名、職名などに添えて敬意を表わす語。「さま」よりくだけたいい方。
③ 体言または体言に準ずるものに添えて丁寧な感じを表わす語。
※洒落本・阿蘭陀鏡(1798)二「モシナはばかりさんながら」
ざまあ【様】
〘名〙
① 「ざま(様)」の変化した語。
② 「ざまあ(様)見ろ」「ざまあ(様)見やがれ」などの略。
※洒落本・船頭深話(1802)二「どれ見せや。ざまア。馬鹿金が半分でもねへ。あのやらうはきついぜへこんぢうの消口をみたか」
よ【様】
〘名〙 「よう(様)」の変化した語。
※雑俳・たん生日(1705)「路次々々がはちの巣の様(ヨ)に多い也」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報