樹皮(読み)じゅひ(英語表記)bark

翻訳|bark

精選版 日本国語大辞典 「樹皮」の意味・読み・例文・類語

じゅ‐ひ【樹皮】

〘名〙 樹木の幹の外皮。コルク形成層より外側の枯死した皮層や表皮からなる。コルク層が発達するとその外側の部分は枯死して樹皮になる。
※重訂本草綱目啓蒙(1847)二八「崖淑、いぬざんしゃう〈略〉樹皮は和方にもちゆ」 〔拾遺記‐秦始皇〕

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デジタル大辞泉 「樹皮」の意味・読み・例文・類語

じゅ‐ひ【樹皮】

樹木の表皮。最外層にある死んだ組織の集まりで、コルク形成層ができると外側に押し出され、内部と遮断されて、やがてはげ落ちる。
[類語]木肌木皮靭皮表皮竹の皮渋皮甘皮

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改訂新版 世界大百科事典 「樹皮」の意味・わかりやすい解説

樹皮 (じゅひ)
bark

木本植物について,茎のコルク形成層より外側の組織を総称したもの。形成層より外側の,師部・皮層などの組織も含めていうこともあり,かなり漠然とした内容のものである。コルク組織より外側では水や空気が通りにくくなっており,樹皮の組織の細胞は死んで,外側から順次はげ落ちていく。外側がはげ落ちたあとに,二次師部とその外側の組織が茎の表面に残ることがあり,それを靱皮bastと呼んでいる。靱皮というのは,もとは茎の周辺から採取される繊維を商業的にいったもので,植物学的には二次師部の部分に相当する。

 樹皮は種により,また同じ種でも樹齢によって異なっているが,同じ樹齢では種によって決まっており,樹皮によって樹種の同定ができることもある。コルク形成層の活動によって内側から組織が作られてくると,ついには表面が破壊されるが,内側からの膨れの量や期間,および周辺の状態などによって,破れ方がさまざまである。そのような樹皮のことを木の肌ということもある。樹皮の模様にはいろいろあり,マツのように鱗状になるもの,スギのように帯状になるもの,スズカケノキのように表面がまだらに裂けるもの,シラカバのようにコルクの層が幾層にも重なって薄皮のようにはがすことができるものなどがある。
執筆者:

木材工業の原料となるような巨木の樹皮は,厚みが5cmをこえることも多い。これらでは,コルク組織が中心となる外樹皮と繊維性に富む内樹皮とが明確に区別できる。コルク組織の少ないスギなどでも内樹皮は繊維性に富み,外樹皮と区別できる。内樹皮はタンニン分,糖分に富む。とくにタンニン分は皮なめし用として使われている。繊維利用の例としては,小径木だが,コウゾミツマタによる和紙製造および樹皮布がある。外樹皮はコルク質に富み,ワックス樹脂分を多く含む。コルクガシの樹皮は最大のコルク原料である。ワックスはベイマツから工業的に取り出されている。バーク堆肥は樹皮と鶏糞とをまぜて発酵させたもので,稲わらの堆肥に代わって広く使われている。樹皮を細かく砕いたものが各種用途の増量剤に使われることも多い。特殊な樹種の樹皮は医薬になり,キナ(キニーネ),キハダベルベリン)はその一例である。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「樹皮」の意味・わかりやすい解説

樹皮
じゅひ

樹木の幹・枝・根などは形成層の活動によって肥大成長するが、このうち、形成層より外側の部分を樹皮といい、内側の部分を材(木材)とよぶ。樹皮は次のような過程を経てつくられていく。形成層から外方に細胞分裂して最初にできた部分を二次篩部(しぶ)といい、糖類などの栄養分を運ぶ篩管または篩細胞、その働きをコントロールする伴細胞またはタンパク細胞のほか、篩部柔細胞、靭皮(じんぴ)繊維、放射柔細胞などからなっている。二次篩部は、新たに形成層からつくられる木部と篩部によって順次外方へと押し出されるほか、肥大成長によって引き伸ばされていくため、順次外方のものから通道組織としての機能を失っていく。このようにして機能を失った外方の二次篩部にはコルク形成層が新たに分化し、やがてコルク形成層の外側にコルク層、内側にコルク皮層を形成して周皮となる。コルク層ができ始めると、この層は水分を透過しにくいため、それより外方にある組織は死滅することとなる。周皮は次々と内側に新しく形成されていくため、それ以前のものは肥大成長につれて外方に押し出されると同時に引き伸ばされ、順次はげ落ちていく。いちばん内側の周皮から外側の部分はすべて死んだ組織からなるため、この部分は外樹皮あるいは粗皮(あらかわ)とよばれる。これに対して内側の部分は内樹皮あるいは甘皮(あまかわ)とよばれる。

 樹皮は前述したように継続して形成層からつくられるにもかかわらず、外方から順次はげ落ちていくため、木材のように多量に蓄積することはない。しかし、スギ科のセコイアやコルクをとるコルクガシなどでは外樹皮の部分が比較的厚く蓄積している。樹皮のはげ落ち方にはスギやヒノキのように細長い帯状にはげるもの、シラカンバのように薄い紙状にはげるもの、スズカケノキのようにまだら模様になるものなどがあり、樹種によって大きく異なる。樹皮の通気組織には細長い割れ目状の皮目(ひもく)があり、これの形もさまざまである。樹皮にはさまざまな有用物質(たとえば樹脂、タンニンなど)が含まれているため、ワックスや皮なめしなど、工業的にも用途は広い。また、繊維は和紙製造などに利用されている。

[鈴木三男]

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百科事典マイペディア 「樹皮」の意味・わかりやすい解説

樹皮【じゅひ】

樹木の幹や枝の最外層にある死んだ組織の集り。裸子植物被子植物木本(もくほん)では形成層のはたらきで,年々幹や枝が肥大し,皮層内にコルク形成層ができる。コルク形成層が分裂し,コルク層が形成されると,水液の交通が絶たれ,外側の組織は死ぬ。枯死した組織はある期間付着しているが,外方から剥離(はくり)する。普通これを樹皮といい,コルク層から形成層までを靭皮(じんぴ)といって区別するが,広義には形成層から外側すべてを樹皮ということもある。樹皮はコルク(コルクガシ),染料(シャリンバイ),薬用(キナ),細工物(サクラ)とし,靭皮は織物(オヒョウ),和紙(コウゾ),および檜皮葺き(ひわだぶき)(ヒノキ),杉皮葺き(スギ)など屋根葺き材料として利用される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「樹皮」の意味・わかりやすい解説

樹皮
じゅひ
bark

木の茎においてコルク形成層より外側の皮層ならびに表皮をいう。この部分はコルク層が形成されるに従って細胞が枯死し,茎の太るのにつれて裂け目を生じ,やがてはげ落ちる。

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普及版 字通 「樹皮」の読み・字形・画数・意味

【樹皮】じゆひ

樹の皮。

字通「樹」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の樹皮の言及

【帆船】より

…船首に数枚のジブ,各マスト間にステースルをもつこと,また各帆の呼称方法などは次のバークと同じである。(2)バークbarque,bark 3本または4本マストで,まれに5本のものもある。最後部のマストだけは横帆がまったくなく,縦帆のガフセールとガフトップスルがつく。…

【有用植物】より

…この性質のため,人類の衣料原料としてワタは他の植物繊維とはかけ離れた重要な位置を占めた。
[樹皮植物]
 靱皮繊維のように,植物の皮層の繊維を取り出して利用するだけでなく,植物の茎の皮層の部分,すなわち樹皮を直接的に利用している樹木も多い。日本では,ヒノキの繊維質の樹皮は耐水性や耐腐朽性があり,檜皮葺き(ひわだぶき)のように屋根材にされる。…

※「樹皮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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