橋本英吉(読み)はしもとえいきち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「橋本英吉」の意味・わかりやすい解説

橋本英吉
はしもとえいきち
(1898―1978)

小説家。福岡県築上(ちくじょう)郡吉富(よしとみ)町に生まれる。本名亀吉。高等小学校卒業後、郵便局員、坑夫などを経て上京、共同印刷に入ったが、1926年(大正15)の争議解雇徳永直(すなお)、横光利一(よこみつりいち)と知り、『棺と赤旗』(1928)で坑夫小説の書き手として知られるようになり、リアリズムに徹した長編小説『炭坑』(1934)は代表作となった。ナップ派にあって活躍したが、のち転向。第二次世界大戦前では『欅(けやき)の芽立』(1936)、『衣食住その他』『坑道』(ともに1939)など、戦後では富士山での気象観測に苦闘する野中至(いたる)夫妻を描いた『富士山頂』(1948)その他の作品がある。

[大塚 博]

『『日本現代文学全集89 橋本英吉他集』(1968・講談社)』『国岡彬一著『橋本英吉の「炭坑」・「坑道」をめぐって』(『日本文学研究資料叢書 プロレタリア文学』所収・1971・有精堂出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「橋本英吉」の意味・わかりやすい解説

橋本英吉
はしもとえいきち

[生]1898.11.1. 福岡,吉富
[没]1978.4.20. 静岡,大仁
小説家。本名,白石亀吉。小学校卒業後,郵便局員,炭鉱員などを経て上京,徳永直を知りナップに参加,『棺と赤旗』 (1928) などの炭鉱労働者小説で認められた。 1932年検挙され転向,『炭坑』 (34) ,『欅 (けやき) の芽立』 (36) などで日本社会の底辺部をあばいた。第2次世界大戦後の代表作は『富士山頂』 (46) ,『三脚の鼎』 (71) 。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「橋本英吉」の解説

橋本英吉 はしもと-えいきち

1898-1978 昭和時代の小説家。
明治31年11月1日生まれ。行商人,鉱山労務者などをへて博文館印刷(現共同印刷)の印刷工となる。徳永直(すなお)を知り,横光利一の影響をうける。プロレタリア文学運動に参加し,のち転向。戦後,「富士山頂」を発表。昭和53年4月20日死去。79歳。福岡県出身。本名は白石亀吉。代表作に「炭坑」「欅(けやき)の芽立(めだち)」。

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