歌よみに与ふる書(読み)ウタヨミニアタウルショ

デジタル大辞泉 「歌よみに与ふる書」の意味・読み・例文・類語

うたよみにあたうるしょ〔うたよみにあたふるシヨ〕【歌よみに与ふる書】

正岡子規歌論書。明治31年(1898)発表。短歌革新を目指し、万葉集金槐集をたたえ、旧派和歌を攻撃したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「歌よみに与ふる書」の意味・読み・例文・類語

うたよみにあたうるしょ ‥にあたふるショ【歌よみに与ふる書】

歌論。竹の里人(正岡子規)著。明治三一年(一八九八)発表。「古今集」以来の和歌を技巧理屈に堕したものとして排し、「万葉集」「金槐集」を賞揚、平易に写生することを主張した和歌革新論。

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改訂新版 世界大百科事典 「歌よみに与ふる書」の意味・わかりやすい解説

歌よみに与ふる書 (うたよみにあたうるしょ)

正岡子規の歌論。1898年(明治31)2月12日~3月4日《日本》に連載。《子規随筆続篇》(1902)所収。短歌革新を目的とし,桂園派を中心に勢力をもっていた旧派歌人を意識して書かれた歌論で,古今調を非難しつつ,《万葉集》,源実朝の和歌を称揚。作品では,格調が高く,同時に内容の面では理屈を排しつつ,視覚描写の歌風を説いた。根底には,日本の伝統文学を鉄壁たらしめようという意欲が支えになっており,俳句で定着させた,即物的で抒情を抑えた表現の活用を企図していた。歌論自体のもつ情熱的表現とその説得力は,青年に強く働きかけ,伊藤左千夫,長塚節をはじめ多くの青年たちを歌人として大成させる契機となり,史的には,《明星》系とは質を異にした短歌世界を生み出す理論的,精神的支えとなった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歌よみに与ふる書」の意味・わかりやすい解説

歌よみに与ふる書
うたよみにあたうるしょ

正岡子規(しき)の歌論書。新聞『日本』に1898年(明治31)2月11日より3月4日まで10回にわたって連載。1902年(明治35)12月、吉川弘文館(よしかわこうぶんかん)刊の『日本叢書(そうしょ) 子規随筆続篇(ぞくへん)』に収録。「仰(おほせ)の如(ごと)く近来和歌は一向に振ひ不申(まうさず)候」「貫之(つらゆき)は下手(へた)な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之(これあり)候」という口調で、当時の旧派の歌人を激しく攻撃し、源実朝(さねとも)の『金槐(きんかい)集』を褒め、和歌の趣向の変化を求めて、理屈を排し、客観写生の重視を説くなど、強い自信と決意にあふれており、子規の和歌革新の第一声になり、歌人としての子規の出発点ともなった。

[宮地伸一]

『『歌よみに与ふる書』(岩波文庫)』

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百科事典マイペディア 「歌よみに与ふる書」の意味・わかりやすい解説

歌よみに与ふる書【うたよみにあたうるしょ】

正岡子規の歌論。1898年《日本》紙上に連載。《万葉集》《金槐和歌集》を賞揚し,《古今和歌集》や桂園派を手本とする旧派和歌を激しく攻撃している。客観を重んじ写生を説き,短歌革新の第一声として多大の反響を呼んだ。

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旺文社日本史事典 三訂版 「歌よみに与ふる書」の解説

歌よみに与ふる書
うたよみにあたうるしょ

明治時代,正岡子規の歌論
1898年発表。子規の短歌革新の第一声として新聞『日本』に連載。『古今和歌集』の亜流の和歌を排撃して,源実朝の万葉風の歌風を推賞し,写生・写実を唱えた。

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世界大百科事典(旧版)内の歌よみに与ふる書の言及

【歌論】より


【近・現代】
 近代および現代では,印刷技術の普及および新聞,雑誌の発達を背景としておびただしい数の〈歌論〉が発表された。《二六新報》に発表された与謝野鉄幹の〈亡国の音(おん)〉(1894),《日本》に発表された正岡子規《歌よみに与ふる書》(1898),和歌革新運動の推進力となったこの二つの〈歌論〉が,早い時期のものとしてまず注目されるのである。近・現代の文学状況は小説中心に展開した。…

※「歌よみに与ふる書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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