日本大百科全書(ニッポニカ) 「正岡容」の意味・わかりやすい解説
正岡容
まさおかいるる
(1904―1958)
小説家。寄席(よせ)芸能研究家。東京・神田生まれ。父は医師平井成(しげる)。8歳で大伯父の正岡家を継いだ。日本大学芸術科中退。早くから歌人吉井勇(よしいいさむ)に師事し、18歳で歌集『新堀端(しんぼりばた)』を出版、創作活動に入ったが、関東大震災後、関西で放浪生活を過ごし、帰京後、小説、レコード台本などを執筆した。小説『置土産(おきみやげ)』(1941)が直木賞候補にあげられたほか、芸能小説『寄席』(1942)、『円朝』(1943)などがある。寄席通として知られ、『日本浪曲史』(1967、没後刊)など、多くの研究・評論・台本などを残している。昭和33年に53歳で没し、東京・谷中(やなか)の玉林寺(ぎょくりんじ)に、墓所と句碑「思ひ皆叶(かの)ふ春の灯(ひ)ともりけり」がある。
[永井啓夫]
『小沢昭一・大西信行・桂米朝・永井啓夫編『正岡容集覧』(1976・仮面社)』▽『大西信行著『正岡容――このふしぎな人』(1977・文芸春秋)』