正徳享保金銀(読み)しょうとくきょうほうきんぎん

改訂新版 世界大百科事典 「正徳享保金銀」の意味・わかりやすい解説

正徳・享保金銀 (しょうとくきょうほうきんぎん)

元禄・宝永期(1688-1711)の貨幣改鋳(元禄金銀)により,幕府は金銀貨品位を低下させて通貨量の増大をはかったため,物価は上昇し,通貨に対する信用が失われた。7代将軍徳川家継の補佐役新井白石は1714年(正徳4)5月,改鋳益金によって華美な奢侈的生活をしていた銀座年寄の中村内蔵助らの粛清を断行し,慶長金貨と同品位の正徳小判,正徳一分金を発行,さらに同年8月には慶長銀貨と同品位の正徳丁銀,豆板銀を造った(正徳金銀)。16年(享保1)8代将軍となった吉宗は享保改革に着手した。幣制については正徳期の方針を受け継ぎ,16年から36年(元文1)4月まで享保小判,享保一分金を鋳造した。銀貨についても同じ時期に享保丁銀,豆板銀を発行した。そのほか25年には享保大判が鋳造された(享保金銀)。また1715年から25年にかけて佐渡国で造られた正徳佐渡小判,一分金または享保佐渡小判,一分金と称えられる金貨が見られる。この正徳・享保期における幣制復古の良貨政策によっても通貨問題は解決されず,36年5月の貨幣悪鋳(元文金銀)による通貨政策の転換を余儀なくされた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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