歯石除去(読み)しせきじょきょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「歯石除去」の意味・わかりやすい解説

歯石除去
しせきじょきょ

歯石を人為的に除去することで、スケーリングscalingともいう。歯石は、歯冠部(歯ぐきから出ている部分)または歯根表面に付着している石灰化した硬い堆積(たいせき)物で、歯周疾患(歯肉炎、歯周炎)のもっとも重要な原因的因子の一つとされている。歯石は、歯面に強固に付着しているため、歯ブラシでは除去することができない。したがって歯石除去は歯科医師または歯科衛生士によって行われるが、これは、歯周疾患の予防、治療ならびに再発防止などの面から、もっとも基本的な処置法といえる。

 歯石除去に用いられる器具を一般にスケーラーscalerといい、手用スケーラーhand scalerと超音波スケーラーultrasonic scalerに大別される。

 手用スケーラーは刃部と柄部からなっており、刃部の形によって、鎌(かま)型スケーラー、鍬(くわ)型スケーラー、鋭匙(えいし)型スケーラー、チゼル型(のみ型)スケーラー、やすり型スケーラーなどに分類される。また使用法によって、引く力を利用するスケーラーと、押す力を利用するスケーラーに分類され、前者には鎌型スケーラー、鍬型スケーラーがあり、後者にはチゼル型スケーラーがある。いずれも、これらのスケーラーは種々の場所に適用しやすいようにくふうされている。

 なお、適用部位によって、前歯用スケーラー、臼歯(きゅうし)用スケーラーの別があるほか、歯周疾患治療の際に歯肉縁下に用いられる刃部の細いスケーラーもある。

 超音波スケーラーは、刃部の超音波振動によって歯石を除去するようにつくられたもので、超音波発生装置と作動部からなっており、刃部と歯面から生ずる摩擦熱の発生を防止するために、注水冷却を施すように設計されている。超音波スケーラーは、手用スケーラーと比較して能率的で、多量の歯石を短時間に除去できる利点をもっている。

 手用スケーラーまたは超音波スケーラーによって歯石除去を行った歯面は粗造となり、歯石の再堆積がおこりやすいため、やすり型スケーラー、歯面研磨器具、研磨材などを用いて歯面を滑沢にすることが必要である。歯石はいったん除去されても、口腔(こうくう)清掃が不十分であると歯垢(しこう)が石灰化され、比較的短時間にふたたび歯石が形成されるので、根本的には、日常の徹底した口腔清掃によって歯垢を除去し、歯石の堆積を未然に防止することが重要である。

[加藤伊八]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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