歯科用合金(読み)しかようごうきん(英語表記)dental alloy

改訂新版 世界大百科事典 「歯科用合金」の意味・わかりやすい解説

歯科用合金 (しかようごうきん)
dental alloy

歯を治すのに使われる合金。悪くなった部分を取り除いた孔への詰めもの(インレーアマルガム),歯にかぶせるクラウン入歯を隣の歯と結ぶクラスプ,入歯の床の材料,あるいは歯の矯正用などとして金属材料が使用されている。人のかむ力は数十kgに達し,繰り返しすりあわさるので,これらの材料は強さが必要であり,入歯の微妙な形が比較的容易にでき,しかも使用中に寸法の変化がなく,口のなかで唾液に長時間接して溶け出したり変質したりせず,人体に害を与えることがあってはならない。しかも,顔の一部となるから品の良い美しさが必要である。これらの難しい要求をほぼ同時に満たすものはないが,金合金が広く使われている。金は歯の色とは異なるが,耐食性がきわめて良く,鋳造性も良いからである。これに適当な添加元素を加えることによって強さを出すことができる。歯科用の鋳造用金合金はAu-Ag-Cuが基本型であって,とくに銅の量を調節することによって強さを変えることができ,成分の違う一連の金合金がある。また,白金パラジウムが若干添加されているものもある。白金を含む金合金は白金加金と呼ばれ,強度が高く,クラスプ,ブリッジ,入歯の床などに使用される。また,白色の合金にホワイトゴールドがあり,これは金の量を減らした,銀,銅,パラジウムの合金である。金を含まない銀合金も使用される。また,金・銀・パラジウム合金は約50%の銀のほか,パラジウム,銅を含み,金は約10%である。貴金属でない合金としてはコバルト・クロム合金,ニッケル・クロム合金がある。アマルガムは銀とスズの合金に銅を添加したもので,水銀と練ってペースト状にして詰める。水銀と合金が反応して固くなり,物をかんでもこわれなくなるのに7~8時間を要する。また,矯正用の線としては18-8ステンレス鋼線などが使われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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